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よい言葉は心のサプリメント
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生き方・教養
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■家庭の平穏は大事だが、それがなかなか難しい

『よい言葉は心のサプリメント』
[著]斎藤茂太 [発行]二見書房


読了目安時間:13分
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いつも変わらなくてこそ、本当の愛だ。
いっさいを与えられても、
いっさいを拒まれても変わらなくてこそ。
(ゲーテ/ドイツの詩人)

 大正十三年暮れに病院が焼けるまでは、父も母も私のそばにいるというような生活の態勢ではなかった。事実、病院が焼けたとき留学からの帰途にあり、香港―上海間の船上にいた。そして、焼け跡に帰ってきた。幸いに、祖父が焼けた病院の敷地の一画に父の帰国に備えて建てていた自宅には少々火が入ったが、なんとか焼け残った。そこで始めた家族そろっての生活が私にとって、初めての家庭の味みたいなものだった。もの心ついたときには父母はヨーロッパにいて、それまでの私には「家庭」というものがなかった。

 火災の前の私といえば、病院の一画にばあやとふたりだけで住んでいた。幼児期の私には、父も母も無縁のような存在で、よほどのことがないと私の前に現われることはなかった。だから、私は「家庭」というものを持たず、家庭団らんなどという雰囲気にひたったこともなかった。ところが、この火事のおかげでその日から、おやじとおなじ卓袱台(ちゃぶだい)で飯を食べるという生活が始まった。それは私にとって恐怖以外のなにものでもなかった。比率からいえば、私はほめられるより叱られるほうがはるかに多かったからだ。

 しかし、それはたしかに「家庭」だった。狭くはあったが、なにしろおなじ卓袱台で父母と一緒に朝ごはんが食べられるのである。私にとって、このことはほとんど初めての経験といってもよく、怖くはあったが「珍しい」感じすら私に与えてもいた。
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