モーセが神のお告げを授かるまで
古代イスラエルの民族指導者モーセは、聖書の登場人物のうちもっとも偉大な人物のひとりで、キリスト教やユダヤ教はもちろん、イスラム教でも大預言者「ムーサー」として尊敬されている。
『旧約聖書』の「出エジプト記」によると、モーセはイスラエル人の子としてエジプトに生まれた。イスラエル人は、その昔、民族の祖ヤコブ(ヤコブが神から授かった名が「イスラエル」)の子ヨセフに率いられてエジプトに移住していたが、時がたち子孫が増えるにつれ、弾圧の対象になっていった。
モーセが生まれたのは、そんなイスラエル民族の苦難の時代である。しかも、当時のエジプトには、「イスラエル人の男児は、出生と同時にナイル川に投げ込め」という、ファラオ(ラムセス二世とみられるが、詳細は後述)の命令が下っていた。