カエサルとの出会い
古代エジプト最後の女王クレオパトラは、美貌を武器にローマの有力政治家を魅了し、世界を動かした女性だ。「クレオパトラの鼻がもう少し低ければ、世界の歴史は書き替えられていただろう」という、哲学者パスカルの言葉は、あまりにも有名である。
クレオパトラは、プトレマイオス朝エジプトの王家の娘として生まれた。プトレマイオス朝は、前4世紀末、アレクサンドロスの部下のプトレマイオスが開いた王朝で、ギリシア・マケドニア系民族によってエジプト人が支配されていた。クレオパトラも、民族的にはギリシア・マケドニア系である。
王朝は、建国初期の一世紀間は繁栄を謳歌したが、やがて王位をめぐる内紛や対立、エジプト人の蜂起に苦しめられて国政が傾き、前2世紀、強国ローマがギリシア・小アジア世界に公然と介入してくるようになった。