「ありがとう」という言葉は、誰でも日常的によく口にしているはずです。
ものを尋ねて教えてもらったとき、何かをしてもらったとき、困っているときに助けてもらったとき、いただきものをしたとき……それこそ枚挙にいとまがないさまざまな折に、相手の厚意や心づかいに対して、誰もが当然のこととして、「ありがとうございます」とお礼を言っているはずです。
ただそれだけに、「ありがとう」という言葉は軽く使われがちだともいえます。何かにつけて「ありがとう」と言うのはいいのですが、条件反射のように口をついて出てくる「ありがとう」は、少しも相手に感謝の気持ちが伝わりません。
あいさつ、とくに「ありがとう」は、言うことが大事なのではなくて、それを言うことによって感謝している心を相手に伝えられなければ意味がありません。
でも、心からの「ありがとう」をじっさいに言おうとすると、なかなか難しいのも事実でしょう。
「ありがとう」、あるいは「ありがとうございます」というたったひと言に、思いをいっぱいに込めて相手に届けたつもりでも、本当に伝わったのか、いささか心もとない気持ちになってしまうことも。それだけで感謝の気持ちをうまく表現できればいいのですが、なかなかこのワンフレーズだけではどうも形式的に響いてしまいがちなのです。
そんなとき、心から感謝している気持ちを上手に伝えるためには、「ありがとう」に、ひと言そえることです。
たとえば、あなたがうっかりミスをしてしまったとき、さりげなくカバーしてくれた先輩の優しさに胸がジーンとなったなら、
「助けていただいて、本当にありがとうございました」
思いやりに満ちた言葉をかけてもらったなら、
「優しい言葉をありがとうございます。おかげでとても勇気づけられました」
このように、具体的に何に感謝しているのか、それを自分の言葉で言えばいいのです。
そんなに多くの言葉を費やす必要はありません。むしろ、シンプルな言葉のほうが、率直ですがすがしい印象になります。ダラダラと長く言うのはインパクトに欠け、鮮烈な感動や感謝の気持ちは伝わりにくいものです。
「助けていただいて」とか、「優しい言葉」とか、率直な気持ちをストレートに言い切ってしまいましょう。
そうした短く飾り気のない言葉をひと言つけるだけで、単なる「ありがとう」とは比べものにならないくらい感謝の気持ちを表現することができます。
知り合いの男性が、こんな話をしていました。
「クルマでドライブに行って、目的地の箱根に着いたときに、彼女が『疲れたでしょう? どうもありがとう』と言ったんだ。よく、デートのあと、『昨日はありがとう』とかお決まりの文面でメールしてくる女性っているじゃない? そういうのって、僕はなんだかマニュアルじみた気がして好きじゃないんだけど、彼女の『ありがとう』はすごくナチュラルな感じがしてね。彼女の気持ちが素直にこちらに伝わってきて、グッときちゃったよ」
彼の気持ち、わかるような気がしませんか? あなたも、「ありがとう」には、効果的なひと言をそえてみてはいかがでしょう。