「三月一日深夜、同志スターリンは、モスクワの自宅で脳出血を起こし、意識を失った。右腕と右足がマヒし、言語機能障害に陥った」
これは、一九五三年三月四日に発表された、ソ連の政府広報である。けっきょく、ソ連を恐怖に陥れた独裁者スターリンは、三月五日に死亡した。だが、死んだ場所はモスクワの自宅ではなく、ヴォルィンスコェの別荘だった。
さて、スターリンの死にも謎がある。公式報道や目撃証言に矛盾が見られるのだ。いつ卒中に襲われたのか、医者はいつ呼ばれたのかも明らかになっていないのである。
だからといって、誰かがスターリンを殺したというわけではない。直接の死因が卒中であることは確かだ。