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見て学ぶ アメリカ文化とイギリス文化 映画で教養をみがく
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エンタメ
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『ハンナとその姉妹』で学ぶ アメリカの感謝祭と家族観

『見て学ぶ アメリカ文化とイギリス文化 映画で教養をみがく』
[編著]藤枝善之 [発行]近代映画社


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 この映画を監督し出演しているウッディ・アレンは、ニューヨークに生まれ育ち、このおしゃれな街を舞台にシニカルでウィットに富んだ映画を数多く撮っています。1986年度のアカデミー脚本賞、助演男優賞、助演女優賞を受賞したこの作品は、間違いなくアレンの代表作の一つ。本作品は、感謝祭の日の晩餐を軸に三姉妹とそのパートナーたちの人間模様を描きます。

 長女ハンナは今年も家族をはじめ大勢を招いて、感謝祭晩餐会を開いています。妹のリーとホリーも、一緒に台所で忙しく働きながら近況報告を交します。ホリーは女優を目指していますが、いつまでたっても売れません。女優を目指しながら友人とケータリングのビジネスを立ち上げるからと、ハンナにいつものように借金を申し込んでいます。長女ハンナはしっかり者で、精神的にも経済的にも家族の要になっています。

 ハンナの元夫、ウッディ・アレン演じるミッキーは自分が悪い病気にかかっているのではないかと心配ばかりしています。ハンナとの結婚生活では子供に恵まれず、夫婦の友人から精子の提供を受けて双子を授かりましたが離婚。しかし今もハンナとの関係は良好で、双子の誕生日にはプレゼントを持ってハンナの家を訪ねます。

 翌年の感謝祭。リーとハンナの夫、エリオットは関係を持つようになっていました。罪悪感を持ちながらもエリオットとの関係にのめり込んでいくリー。一方、ホリーはせっかく始めたケータリングのビジネスもやめ、再度ハンナに借金をして脚本家になるための講座に通い始めます。ところが書いた脚本には、ハンナとミッキーやエリオットとの私生活が赤裸々に書かれていました。ハンナは深く傷つくのですが…。

家族が集う感謝祭


 この映画では毎年の感謝祭ディナーがハンナの家族の姿を映す重要な場面になっています〈0 : 01 : 55〜〉〈1 : 23 : 22〜〉〈1 : 39 : 38〜〉。アメリカ合衆国の感謝祭の日は、11月の第4木曜日で、休日です。カナダでは10月の第2月曜日が感謝祭です。感謝祭の始まりは、1620年にイギリスからアメリカのプリマス植民地に移り住んだピルグリム・ファーザーズが、翌年、初めて育てた作物の収穫を感謝したことだと言われています。メイフラワー号で12月に到着した総勢102人は、春を迎えるまでに半数が飢餓と病気で亡くなりました。残りの半数が生き延びたのは、アメリカ先住民のワァムパノーグ族のおかげでした。彼らはトウモロコシの植え方や猟の方法を移住者に教えました。最初の感謝祭は、移住者たちが収穫の感謝と上陸後の苦難を想い、ワァムパノーグ族を招待しての140名にもおよぶ大きな祝宴が、三日三晩に渡って続いたと言われています。

 現在は感謝祭の木曜日に続いて金曜日も休み、連休にする職場もあります。この金曜日はクリスマス商戦に弾みをつけようと多くの店が値下げをするので、ブラック・フライデーとも呼ばれています。その日は店が売り上げを伸ばし、「黒字」になることから来ています。

 アメリカは個人主義が徹底していて、あまり家族の結びつきを大切にしないのではないかと思う人もいるかも知れません。しかし、決してそうではありません。感謝祭をはじめクリスマスなどには家族が集まります。さらに遠く離れて暮らしていても日頃から電話を頻繁にかけて、元気でいるかどうかを確かめます。高齢の親がいればなおさらです。

 アメリカの感謝祭の時期には家族で祝うために帰省する人たちの車で道路は大渋滞し、飛行機も満席になります。日本のお盆やお正月の帰省ラッシュさながらです。感謝祭の当日は親戚や友達が感謝祭ディナーに集い、招く側は朝から大忙しです。当日のごちそうは、七面鳥の丸焼きです〈0 : 05 : 27〜〉。大きな七面鳥に火を通すには数時間かかります。ディナーでは、丸焼きの七面鳥を一家の主が切り分けるのがしきたりです。お客さんにダークミートと呼ばれるモモなどの少し脂がある部分か、ホワイトミートという胸などのあっさりした部分のどちらがいいかを聞きながら、主人がお客に切り分けます。七面鳥には、焼いた時に出た肉汁を煮詰めて作ったグレービーソースやかわいい赤い実をつけるツルコケモモで作った少し酸味があるクランベリーソースをかけて食べます。マッシュポテトかサツマイモに似た鮮やかなオレンジ色のヤムイモをつぶしたものや、ビーツと呼ばれる赤い砂糖大根などが付け合わせです。デザートはパンプキンパイなどのパイが定番です。家族、親戚、友達が久しぶりに集まって、近況報告やゴシップに花を咲かせながらごちそうを食べるのは、日本のお正月にも似た雰囲気です。

子供のしつけ


 "Children can be seen and not heard."「子供は見られてもいいが、聞かれてはならない」――このフレーズは、アメリカの子供のしつけにまつわるものです。子供たちは大人の会話を邪魔してはいけないし、大きな声を出して騒いでもいけないという、食事中のお行儀を表現しています。映画の中で、大人は大きなダイニングテーブルを囲み、子供たちは小さなテーブルを囲んで子供同士で食事をしています〈0 : 07 : 32〜〉。誰かのお宅に子供と一緒に招かれる場合には、よく見かける光景です。子供たちは大人と別の部屋で食べることもあります。大人の邪魔をしてはいけないということです。

 しかし子供たちを別の席にするのは他の理由もあります。大人の食べている料理は往々にして子供の口に合わないからです。ですから、子供たちには別にホットドッグ、ハンバーガーやポテトなど子供の好物を出してくれる家もあります。デザートも大人たちより先に済ませ、子供同士の食事が終わればまた遊ぶことができます。こうすれば、いつまでも退屈な大人の会話を子供たちが同じテーブルで聞いている必要はありません。

親子関係と家族のかたち


 この映画で子供ができないと診断されたハンナとミッキーは、友人の男性から精子の提供を受けてハンナは双子を産みます〈0 : 33 : 37〜〉。現在は、インターネットで提供者の詳しいプロフィールを確かめて、精子や卵子を手に入れることができます。子供が欲しいけれども結婚したくないという独身の女性はこうしたサービスを利用し妊娠することが可能です。また男性も、妊娠を請け負って出産後に子供を渡してくれる代理母に依頼し、子供を手にすることが可能です。一人親であるシングル・マザー、シングル・ファーザーは、必ずしも死別、離別の結果とは限らず、積極的に選択してなる場合もあるのです。アメリカでは個人の選択権や自由な意思が妨げられることを極端に嫌います。ですから、子供を持つ方法についても法的な規制が少ないのが現状です。

 また、最近増加しているのは同性愛のカップルで子供を連れている人たちです。アメリカでは同性同士の結婚を認める州が増えてきましたが、保守的な土地では、まだ同性愛について強い偏見が残っています。そのためこうしたカップルはニューヨークをはじめアメリカの大きな都市に多く住んでいます。両親というのは、もはや男女のお父さんとお母さんの組み合わせだけではありません。男性のカップルであれば自分たちの精子を使って代理母に出産を依頼できますし、女性のカップルであれば精子の提供を受けて子を持つことができるのです。

 かつては血がつながらない親子関係は、養子または再婚によるものが大半でした。アメリカでは子供を連れて再婚し、新しくできた家族をステップ・ファミリー(継父はステップ・ファーザー、継母はステップ・マザー)と呼びます。しかし、今やドナーと呼ばれる精子・卵子の提供者や代理母が関わることによって、血縁や遺伝的なつながりのないさまざまな親子関係が生まれています。

 この映画に出演しているハンナ役のミア・ファローは、二人の実子の他にベトナム、韓国から養子を迎えました。ファローは前夫と離婚後、映画監督で俳優のウッディ・アレンとの間に未婚のまま実子をもうけ、他にも受け入れ先を探すことが困難な障害を持つ子供を養子に迎えました。この映画の中でも感謝祭ディナーの場面には、白人の子供たちとアジア系の子供たちがいます〈1 : 27 : 28〜〉。しかし、アジア系の大人は映っていません。アジア系の子供たちは養子という設定なのかも知れません。最近ではブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリー、歌手のマドンナなどがアフリカから養子を迎えています。アメリカの家族は、もはや、必ずしも血縁や遺伝的なつながりが前提ではないと言えるでしょう。

より深く学ぶための3冊

『アメリカの家族』岡田光世(岩波書店/岩波新書)
『世界の食文化12/アメリカ』本間千枝子、有賀夏紀(農山漁村文化協会)
『図解雑学ジェンダー』加藤秀一、石田仁、海老原暁子(ナツメ社)

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