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映画批評真剣勝負 ぼくが映画に夢中になった日々《映画論篇》
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エンタメ
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チャプリン氏への一青年の公開状 ――「モダン・タイムス」を見て――

『映画批評真剣勝負 ぼくが映画に夢中になった日々《映画論篇》』
[著]荻昌弘 [発行]近代映画社


読了目安時間:13分
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 ――尊敬するチャールズ・スペンサー・チャプリン氏。

 あなたが勿論一番よく御承知のように、近く世界の各地で、あなたが一九三六年にお作りになった映画「モダン・タイムス」が再び銀幕を飾ろうとしております。この機会にあたって、尊敬するあなたに呼びかけることのできるスペースを「スクリーン」誌が与えて下さったのは、私にとって大きな喜びであり、光栄であります。私がかつて十二、三歳の少年でありました時封切られた、このあなたの最後のサイレント映画を、十六年後の或る日再び問題にすることがあるだろうとは、私、想像もしておりませんでした。しかし今日、私はあえてそれを採上げて問題にしようとしております。この一人の貧しい労働者が現代の都会生活の中でさまざまなヘマを繰返しながら、愛する少女と山の彼方へ逃れて行く映画は、今日の青年たちが知っているあなた――「殺人狂時代」や「ライムライト」のあなた――以上の“ほんとうのあなたの姿”を若い世代の青年・少年たちに教え、そして大切なことは、今日殆ど“映画”を忘れてしまったらしい世界中の映画人・就中喜劇映画人に、映画の正しい姿の一つの典型を教えて下さっているように、私には思われるからです。

 ――尊敬するチャールズ・スペンサー・チャプリン氏。

 しかしこれは、あなたがこれまで無数に受取って来られ、今日も受けておいでになるであろうような、ファン・レターではありません。私はここで一切お世辞は申しますまい。あなたは今日、ブルジョワ資本主義に反抗を試みた英雄(一方から言えば裏切者)として世界のあらゆる陣営の、どちら側からもいわば不当に買被られておられる。私は決してあなたをそのような英雄とは考えません。ただ一人の、非常に高度の感覚と技倆を持った・大胆で自己確信の強い芸人としてあなたを遇することのみが正しい態度だと思っています。ですから、この文章は決してジャーナリスティックな英雄讃歌にはならない筈です。そしてまたは今日、映画という現代人の夢を現在の芸術にまで高めた功績者の一人として、特に《生れながらの活動好き》を自慢の種にしたがる古いファンたちによって、過度に伝説化されすぎてしまった人物のように私には見られます。映画芸術は何もあなた一人が作り、守って来たものでもないのに。この点でもまた私の執る態度は、あなたを創作力の旺盛な・自分の芸に対して潔癖な一人の芸人として遇する以外のなにものでもありません。
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