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映画批評真剣勝負 ぼくが映画に夢中になった日々《映画論篇》
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エンタメ
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或る映画評論家の生活と意見

『映画批評真剣勝負 ぼくが映画に夢中になった日々《映画論篇》』
[著]荻昌弘 [発行]近代映画社


読了目安時間:16分
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 若い方からのお手紙に、充分、返事が書けない、書くだけの時間が取れない、のは、実に心苦しいことだ。私の仕事部屋の机上には、「要返事」とフダを立てたボックスに、そんな封書が文字通り山と積まれてしまっている。その山を横目で睨み、「ああ、書かなくてはな」と、胸にチクチク良心の責苦の針を突き刺されながら、原稿用紙の上には、締切りもすぎてしまった「ロッキー」の批評の筆を走らす、――それが私の毎日だ。

 ――きょうは、そうだ、そういう若い方たちに、一括してご返事を出す気持で、今月の「スクリーン」誌のための原稿を書いてみよう。「映画評論家になりたいと思いますが、どうすればなれるのですか。また、どんな勉強をすればいいのですか」という、手紙の山の中でも一番数多い質問に向って――。

映画評論家になりたいあなたに


 映画評論家になりたい、という若者がおおぜいいることは、これは、私にも実によく納得できることである。私自身、どうしてもそれだけになりたくて、この道に進んだのだから。絶えず好きな映画を一番間近なところから見、見れば何かを考え、考えればそれを人に語りたくなって、たとえ一人にでも自分のその考えを説得できたら。それはどんなにすばらしいことか。私はそれを思ってこの道に入り、曲りなりにもそのことだけを生涯の目標にしてきたから、他にも、同じ意志を持つ方があるだろうことは、実によく、わかる。むしろ逆に、「あなた、まァ、人の羨む大学まで出ておいて、何で映画の解説などを」などと言われると、(事実、いまでも言われるのだが)そっちのほうが、よくわからない。きょとん、としてしまう。

 ――しかし、この映画批評という仕事が、“派手”な職業か、なんかこう、マスコミ第一線の走り手なのか、といった、そんな憧れの目で見られているとすれば、それだけは違う、と言わなければならないだろう。淀川長治さんのやってらっしゃることは、ハデなお仕事か。小森和子さんのお仕事は、ハデなことか。佐藤忠男さんの業績は、ハデなお仕事か。それは、違う。むしろそれは、どこまでも地道な、縁の下の積み重ねのような、手作りの毎日である。たぶんこの方たちは、(むろん、私自身も含めてだが)、将来も、マスコミで売り拡げた顔を活用して参議院に、といったことは考えられないメンバーで、「映画」そのものはハデかもしれないが、映画について考えたことを人に語る、という仕事は決してハナバナしいものじゃない――こと勿論、逆に、ひどく手間と屈託の多い、シブい一方の仕事なのである。まずそれを宣言しておきたい。

 ことに私は、いま挙げた方々と少し表面のやり方が違ってきた。映画以外のさまざまな領域に関しても、関心や好奇心を、平気でマスコミを通して外へ出すような形を、ここまでとって来てしまった。他のみなさんは、私以上に持っていらっしゃる、そういう他の世界への幅広い関心(それがなくては映画を考え、語るなんて、できないことなのだ)を、つとめて表に対しては押し隠し、外部に向う時は「映画」そのことだけを語りかける、という賢い強さを貫けた方だった。
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