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真珠湾とヤルタ ソ連参戦情報に見る日独インテリジェンスの違い 【Voice S】
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政治・社会
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真珠湾とヤルタ ソ連参戦情報に見る日独インテリジェンスの違い 【Voice S】

『真珠湾とヤルタ ソ連参戦情報に見る日独インテリジェンスの違い 【Voice S】』
[著]岡部伸 [発行]PHP研究所


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真珠湾とヤルタ
ソ連参戦情報に見る日独インテリジェンスの違い


岡部 伸 

ソ連参戦情報に見る日独インテリジェンスの違い 目次

至極の第一報 外務省にも打電
ドイツ降伏後、連合国では「公然の秘密」
日本中枢が共産主義に降伏
「戦後は共産主義」との終戦構想
「スターリンは西郷隆盛に似て」
「インテリジェンス・サイクル」が回ったドイツ
まずアナリスト養成 不都合な情報も客観分析を


 第二十二回「山本七平賞」の受賞作となった拙書『消えたヤルタ密約緊急電―情報士官・小野寺信の孤独な戦い』(新潮社)は、ストックホルム駐在陸軍武官だった小野寺少将が日本の命運を分けたソ連参戦のヤルタ密約をいち早く掴み、参謀本部に打電しながら、国際情勢に疎い軍中枢が、これを握りつぶし、国策に生かすことができなかったことを明らかにした。ソ連仲介による終戦工作という政策が先にあり、それに奔走していた中枢には、政策と反する参戦情報は不都合で目障りだった。それでは、日ソ中立条約を破棄して参戦しようと待ち構えていたソ連に、なぜ日本が米英との和平の仲介を委ねる愚かな工作を進め、貴重な時間を空費したのだろうか。大きな謎が残った。

 受賞を機に『Voice』編集部から、「歴史から見たインテリジェンスの重要性」をテーマに執筆のありがたい申し出をいただいたので、本稿では、英国立公文書館などで新たに入手した史料を元に、この謎の解明に挑みながらインテリジェンスについて考えたい。

ヤルタ会談直前の一九四五年一月三〇日、ストックホルム日本公使館の公使公邸でドイツのフォン・ウッタマン武官(左)、神田襄太郎参事官(右)と談笑する小野寺信陸軍武官(小野寺家提供)


至極の第一報 外務省にも打電




 まず大戦末期、ソ連参戦情報がどのように伝えられたかを検証したい。一九四五年二月、クリミア半島ヤルタで連合国三巨頭が交わした「ドイツ降伏三カ月後、ソ連が対日参戦する」という密約は、日本と中立条約を結んでいたソ連に配慮して、米国では会談から二カ月後、ルーズベルトの急死で大統領になるトルーマン副大統領にさえ、七月のポツダム会談直前まで知らせないほどの「トップ・シークレット」だった。

 その機密情報を小野寺は、ストックホルムで会談直後にロンドンの亡命ポーランド政府参謀本部から得て二月中旬に参謀本部に打電する。これが至極の第一報であった。

 三月に入り、ドイツのリッベントロップ外相から聞いた大島浩ドイツ大使が外務省に伝えた、と戦後、防衛庁(現防衛省)の聴取に答えたことが「防諜に関する回想聴取録」(防衛研究所所蔵)に書かれている。英国立公文書館で英国政府の通信傍受機関、ブレッチリーパーク(政府暗号学校)が各国の外務電報を傍受、解読した最高機密文書ULTRAを集めた「HW12」を探索すると、確かに三月二十二日付で大島がベルリンから外務省にあてた「ヤルタでスターリンが対日参戦を約束した」との電報を傍受した機密文書があった。

 英国が傍受、解読しているため、大島が外務省に打電したことは間違いない。しかし、外交資料館にこの電報は残っていない。何らかの理由で外務省に届かなかったことも考えられるが、この前後に大島が打った電報が着信しており、ここは小野寺電同様に東京に届きながら、いずれかで抹殺されたと考えたほうがよさそうだ。


ドイツ降伏後、連合国では「公然の秘密」
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