「お楽しみはこれからだ」とアル・ジョルスンが歌い始める。トーキー映画第一号の『ジャズ・シンガー』である。そして、これがミュージカル映画第一号でもあった。サイレントからトーキーへと映画が移行すると共に、ミュージカル映画は一気に花開く。まずはブロードウェイ・ミュージカルのコピーから始まり、やがて優れた映画オリジナル・ミュージカルも登場、1940〜50年代にミュージカル映画は爛漫期を迎える。やがて緩やかな低迷へと向かった時代を経て、いま再び復活の兆しだ。かつてのような大ブームは二度とないだろうけれど、魅力あふれるひとつのジャンルとしてミュージカル映画が再認識されたのである。いや、誕生してから80余年の間、ミュージカル映画はいつだってまばゆい輝きを放ち、愛され続けてきたのだけれども。