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2時間でわかる日本の名著
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生き方・教養
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◎愛か、お金か? 永遠のテーマで描かれる人間模様―― 金色夜叉(こんじきやしゃ) 1897年(明治30)

『2時間でわかる日本の名著』
[編]夢プロジェクト [発行] 河出書房新社


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尾崎紅葉(おざきこうよう)
1867−1903


【うんちく】熱海の海岸での名場面があまりにも有名

 舞台は熱海の海岸。青年、間寛一は恋人のお宮が資産家の息子と結婚すると知り、激怒し嘆き悲しむ。そのときの名台詞が、「一月十七日のこの月は僕の涙できっと曇らせてみせる。来年の今月今夜、再来年の今月今夜」……。

 お宮は泣いてわびるが、寛一は受け入れず、彼女を足蹴(あしげ)にする。小説のなかの架空の人物なのに、このふたりは、あたかも実在したかのように銅像になり、熱海の観光名所になった。

 明治中期に、新聞小説として書かれた『金色夜叉』は、連載当時から人気を集めたが、その後も繰り返し芝居・映画になり、不朽の名作としての地位を得た。愛と金のどちらを選ぶか。この選択を迫られる女性はいまもいるだろう。その永遠のテーマを描いているので、いまもドラマとして通用するのである。

 文学史的には言文一致体が主流になる直前の作品なので、文体は古い。会話はいまの言葉とほぼおなじだが、地の文は漢文調の「雅俗折衷体(がぞくせっちゅうたい)」という文体で、現代人にはいささかなじみにくいだろう。しかし、ストーリーはスピーディーに展開するので、慣れてくるとすいすいと読める。
「金色」とは富、「夜叉」とは鬼のことである。主人公の寛一は、大金持ちに恋人のお宮を取られたことで、人格が変わり、金しか信じない高利貸しになる。この金色夜叉となった寛一が、はたしてお宮を許すことができるかどうかをめぐって、熱海の海岸以後のストーリーは展開する。

 後半は、寛一が偶然に出会ったカップルが、お宮の夫と関係のある人物であるなど、できすぎた話となり、いかにも大衆小説という展開になる。

 中断しながらも6年にわたり連載されたのだが、作者の死によって未完となった。冒頭に紹介した海岸の場面は、物語の導入部なのだが、ここがいちばん有名な山場となってしまったのも、本当のクライマックスが書かれなかったからかもしれない。演劇、映画では、お話としてそれらしく終わらせなければならないので、それぞれの脚本家が独自の結末を考えた結果、さまざまな種類の結末が生まれた。小説のほうも弟子による完結編がある。

【ストーリー】大金持ちに恋人を奪われた寛一は、カネの亡者に…

 間寛一は両親を亡くしたが、父の恩人である鴫沢(しぎさわ)隆三に引き取られ、大学まで行かせてもらった。その鴫沢家のひとり娘の宮と恋仲になると、両親もそれを喜び、寛一を婿に迎えようと考えていた。だが、宮はカルタ会の席で銀行家の御曹司である富山唯継(とみやまただつぐ)に見初められ、彼女自身の気持ちも、いつしか寛一から富山に移ってしまう。両親は宮の気持ちを確かめ、富山家に嫁に出すことにした。そして寛一には、宮のことをあきらめてもらう代わりに、ヨーロッパに留学させ、養子として鴫沢家を継いでもらうことにした。だが、寛一は納得せず、母と熱海に出かけた宮を追いかけ、翻意(ほんい)を迫る(熱海の場面)。しかし、宮の気持ちは変わらなかった。絶望した寛一は、鴫沢家に戻ることもなく、行方不明となる。

 4年がすぎた。寛一は高利貸しの鰐淵のもとで働いている。彼は性格がまったく変わり、金のために生きるようになっていた。その寛一に同業の赤樫満枝が言い寄るが、彼は相手にしない。ある日、夫とともにパーティーに出席した宮は、そこで寛一と再会する。しかし、寛一は宮に気づきながらも、無言で立ち去るのだった。

 寛一が暴漢に襲われ、鰐淵家が放火される事件が起きた。悪辣(あくらつ)な商売が恨みを買ったのである。鰐淵の息子は、これを機会に足を洗うよう寛一を諭すが、彼は耳を貸さない。いっぽう、宮も幸福ではなかった。夫が女遊びをはじめていたのだ。そんなとき、宮は寛一の親友だった荒尾と再会し、結婚を後悔していることを語る。荒尾は寛一のもとを訪ね、宮の話をした。だが、そこに赤樫満枝があらわれると、荒尾はあわてて寛一の前から姿を消した。荒尾は満枝の高利貸しの客だったのだ。

 寛一のもとに、ついに宮がやってきた。かつての裏切りをわびるが、寛一は許さない。宮は絶望して帰っていった。その夜、寛一は夢を見た。宮が満枝を刃物で殺してしまい、寛一に許しを請いながら自殺、それを見た寛一が宮を許し、みずからも死ぬというものだ。

 夢の後、落ち着かない日々をすごしていた寛一は、仕事で塩原に出かけると、その宿で、若い男女と知り合い、ふたりが心中しようとしていたのを助ける。ふたりの身の上話を聞くと、男は不本意な縁談を押し付けられ、女は芸者だったが嫌な客への身請けが決まり、ふたりとも将来に絶望しているという。その嫌な客とは、なんと宮の夫、富山であった。寛一は、死んでまで愛を貫こうとするふたりに感動し、女の身請け金の肩代わりをし、ふたりの身柄を引き受けることにした。

 若いふたりとともに暮らす寛一のもとに、宮からの謝罪とこれまでの思いをつづった手紙が届いた。寛一はもの思いにふけるのであった……。(未完)
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