It's a Wonderful Life(1946年)
「ねぇ、ジョージ、君の人生は本当に素晴らしいものだったんだ。その人生を捨てようとするなんて、とんでもない間違いだとは思わないかい?」
“You see George, you've really had a wonderful life. Don't you see what a mistake it would be to just throw it away?”
クラレンス(ヘンリー・トラヴァース)
You've = You have
Don't you see 〜?「〜だと思わないか?」
what a mistake it would be to 〜「〜するなんてとんでもない間違いだ」
throw it away「それを捨てる」
<元気がでるシーン>
失敗したり、辛い目に遭ったりした時、「自分はダメな人間だ」とか、「自分の人生には価値がないのかも知れない」などと思って落ち込んだことはありませんか。そう考え始めると、どんどん深みにはまり、ますます悲観的な考えから抜けだせなくなったりしますよね。生きていることそれ自体に価値があるのですが、落ち込んでいる時は特に、そのことに気付かないものです。この映画の主人公も、ある失敗をきっかけに悲観的なことしか考えられなくなります。そんな主人公に、ある荒療治を施して元気づけたのが、まだ一人前ではない二級天使クラレンスでした。クラレンスの荒療治とはいったいどんなものだったのでしょうか。
主人公ジョージ・ベイリーは、幼い頃から、故郷の田舎町を出て、何か大きなことをやり遂げるのが夢でした。しかし、人生はなかなか思うようにはいかず、ジョージは大人になっても、故郷に留まらざるを得ませんでした。しかしそれでもジョージは、田舎町でメアリーと結婚し、子供をもうけ、大恐慌や戦中の混乱を切り抜け、ささやかな幸せを手にしていました。いく度となく窮地に陥ってはその場をしのいできたジョージでしたが、クリスマス・イブの日に、乗り切ることのできない事態に遭遇してしまいます。人生に絶望したジョージは、川に身を投げて自殺を図ろうとします。その時、ある老人が、ジョージの自殺を阻止するために、彼よりも一足早く川へ身を投じました。それを見たジョージは、我を忘れて急いで川に飛び込み、老人を助けます。この老人こそが、クラレンスという名の天使であり、のちにジョージを元気づけるために荒療治を施す守護天使なのでした。
自殺を阻止してくれたクラレンスに、ジョージは、「僕なんか生まれてこなければよかった」と漏らします。クラレンスは、そんなジョージに対して荒療治を施すことを決め、ジョージが生まれてこなかった幻の世界に連れて行きます。それはジョージの知らない、人も町も幻滅するほど変わり果てた世界でした。例えば、活躍していたはずの自慢の弟は、子供の頃に池に落ちて亡くなり、そのために、優しかったはずの母親は心を病んでいました。かつてジョージは、池に落ちかけた弟を助けていたのですが、ジョージの存在しない幻の世界では、弟は誰にも助けられずに死んでしまっていたのです。その時、「一人の人生は、多くの人の人生に関わり、その人が欠けると、世の中が厄介なことになってしまうのだ」とクラレンスは言い、続けて、弟の命を救い、それによって母親の心までも救ったジョージに対して、次の言葉を投げかけます(1:59:25)。“You see George, you've really had a wonderful life. Don't you see what a mistake it would be to just throw it away?”「ねぇ、ジョージ、君の人生は本当に素晴らしいものだったんだ。その人生を捨てようとするなんて、とんでもない間違いだとは思わないかい?」
この荒療治によって、ジョージは、多くの人の人生と関わり、そしてその人たちと共に生きた自分の人生がいかに素晴らしいものだったのかに気付きます。そして、命を絶とうとしたことを後悔して、こう言うのです(2:21:51)。“I wanna live again.”「もう一度生きたい」と。気付くと元の世界へ戻っていたジョージは、自分の人生のすべてが愛しいと思い始めます。
自分のことをダメだと思った時は、クラレンスの言葉を思いだしてみるといいでしょう。人は、その心当たりがなかったとしても、少なくとも誰かの人生と関わりながら、何かをやり遂げているはずです。だから、生きていること自体に価値があるのです。そのことをいつも心に留めておきたいものですね。
<このフレーズを盗め!>
若い頃のジョージは、のちに妻となるメアリーと出会ってすぐに意気投合します。月夜に散歩する二人の会話が弾み、美しい月のおかげで、ジョージの口からこんなロマンティックな台詞が飛びだします(0:27:25)。
「月が欲しいのかい。月が欲しいと言って。僕が縄を投げて月を持ってくるから。とてもいい考えだ」。そして、“I'll give you the moon, Mary.”「ねぇ、メアリー、君に月をあげるよ」。
MARY: I'll take it.(頂くわ)
メアリーの返答にあるtakeは、この場合、「頂く」という日本語がぴったりきます。ショッピングの時にも、「頂く」という意味のtakeはよく使われます。
A:Both coats suit you well.(どちらのコートもよくお似合いですよ)
B:Well, I'll take the red one.(そうね、赤い方を頂くわ)
近所の人が、仲むつまじく会話する二人をベランダから見ています。その人は、ロマンティックな会話に夢中になっている二人を見かねて、ジョージに声をかけます(0:27:55)。
MAN ON PORCH:Why don't you kiss her instead of talking her to death?(おしゃべりなんかやめて、はやくキスしたらどうだい)
“Why don't you 〜 ?”は、「〜したらどうですか」と相手に何かを提案する時の決まり文句です。こんなふうに使いましょう。
A:Why don't you come to the party?(パーティーにいらっしゃいませんか?)
B:I'd love to, but I'm busy.(行きたいのですが、忙しくて)