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(2021/11/26 追記)

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100万人の映画教室(上) 私の愛する映画たち
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エンタメ
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映画に明け映画に暮れたわが十年――活動写真時代の正月――

『100万人の映画教室(上) 私の愛する映画たち』
[著]淀川長治 [発行]近代映画社


読了目安時間:12分
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 十歳の私はもう自分一人で金を払って映画を見ていた。自分で金を払って見た第一回の記憶は小学二年のときのデブ君の「つなみ」だった。初めて自分一人で映画館に行ったからその全二巻の短篇のストーリーも場面もがいま目に浮かぶ。しかし一人で行ったということはやっぱりこわかった。それは日曜日でも土曜日でもなくて本当は家で勉強をしているか近所の子供と遊んでいる時間だったからである。

 ところが正月の三ヵ日となると天下晴れて活動写真に一日じゅう三日間べったりと溺れきれる。誰にえんりょもいらない。正月はそのころの私にとってはただただ『活動写真』あるのみ。まさに天国だった。

   ★

 ところがそうとも言えぬ足止めがあったのだ。おついたち、すなわち元旦は学校で式があり、小学生にしてもやっぱり〈お年始〉というものがあったのだ。

 大正時代の正月というものはどこの家も御近所に年始廻りをやったものだ。ガラガラと音を立て入口の戸をひらいて『おめでとうさん』と御挨拶にゆく。名刺入れに名刺を入れる。すると暗い奥の方の部屋から『おめでとうさん』とその家の誰かの言葉がはねかえってくるのだ。小学生がそんなことを。ところがそれがそのころの下町の私の住んでいた正月元旦の常識であった。これで朝の一時間が取られてしまう。かくてこれをすませるや午前十一時ごろから活動写真館に駆けつけるのだ。

   ★

 ところで正月の二日には〈書き初め〉というのがある。これが一番つらい。
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