今月号に紹介されるアメリカ映画を見渡すと、ウィリアム・ワイラーが映画化した「嵐ケ丘」「手紙」(註・日本での公開題名は「月光の女」)のようにエミリー・ブロンテとかサマセット・モームといった知名の作家を始めとして、四年前に出版されたとき驚くほどの人気を集めた「奇蹟の鐘」のラッセル・ジャニー、またこれと同じ頃スリラー作家として名が知られ、最近ではフランスでも非常に読者が多い「潜行者」(原名「暗い路」)のデーヴィッド・グーディス、詩人としても有名なスリラー作家である「大時計」のケネス・フィアリングなどが原作者として名前を並べているので、それぞれの作品が映画化され紹介されるのを機会に、いろいろな角度から原作者について触れてみたいと思います。
「嵐ケ丘」のエミリー・ブロンテ
ジョーン・フォンテーンとオーソン・ウェルズ主演の「ジェーン・エア」が公開されたのは三年前でした。この原作者シャーロット・ブロンテはエミリーよりも二つ年上の姉でしたが、彼女にはまたアンという四つ年下の妹がいて、三人とも揃って文筆の才能にめぐまれていました。この三姉妹の生活を伝記ふうに扱った「身を捧げて」という映画が一九四六年にWB社で製作されて日本でも「まごころ」という邦題で公開されました。このときシャーロットに扮したのはオリヴィア・デ・ハヴィランド、エミリーはアイダ・ルピノ、アンはナンシー・コールマンでした。