近く「白鯨」が封切られるので、ここでジョン・ヒューストンを取りあげるわけであるが、どう書こうかと考えながら、最初のプランを思い切って捨て、第二のプランでいくことにきめた。それというのも「白鯨」を見て感心してしまったからである。
第一のプランは、いままでの監督作品を振返ってみながら、ジョン・ヒューストンの特質を引き出してみることで、編集部でも代表的場面をすでに揃えてある。第二のプランというのは、グレアム・グリーンが単行本になったとき読んで『ハリウッドでは、こんなにまで一流作品をズタズタに切ってしまうのか!』と驚いた「ピクチャー」という本から、ジョン・ヒューストンを理解してみたいということである。
この「ピクチャー」は、単行本になる前にニューヨーカー誌に九回に亘って連載されたもので、筆者はリリアン・ロスという同誌の婦人記者、非常に面白いもので、一九五二年に雑誌に連載されたときは「作品番号一五一二」となっていた。これを読むと、ハリウッドにおけるヒューストンの立場がよく分かるのであるが、全部を訳せば五百枚以上になるので、どうにも手が出ない。しかし「白鯨」を見たあとでは、まがりなりにも、この本にどんなことが書いてあるかを紹介することが、ジョン・ヒューストンを知るうえで最も参考になるという気がしたので、思い切ってやることにしたわけである。
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リリアン・ロスは以前からジョン・ヒューストンを知っていた。