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植草甚一WORKS2ヒッチコック、ヒューストンら監督たちについて
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エンタメ
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ブロードウェイとハリウッドをまたにかけて歩く男 エリア・カザン、その知られざる半生

『植草甚一WORKS2ヒッチコック、ヒューストンら監督たちについて』
[著]植草甚一 [発行]近代映画社


読了目安時間:22分
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 エリア・カザンが、映画監督として、どの程度まで信頼がおける人物であるかどうか、この点に関しては、アメリカにおける一般的な評価のあり方と、日本における純粋な映画鑑賞眼による評価のしかたの間で、相当の食い違いがあるように思われる。そして、このことは、アメリカ映画、というよりは現在の映画を考えるうえで、いろいろと興味ある問題を提出するのである。おそらく、今度のマーロン・ブランド主演「波止場」が封切られた場合でも、アメリカ人の見方と私たちの見方とが相当違ってくることは想像にかたくない。

 問題は、作られる映画の内容と表現との関係のしかたにかかっている。カザンが監督する映画は、その題材において、いつも面白い。しかし、その題材の面白さが、それがそうある以上に映画的表現を通して果してどれだけ生かされたかは、彼の作品の場合、いつも疑問となって残される。未輸入になってしまった二作(註・この時点では未輸入だったが、その二作のうち「紳士協定」は1987年に日本公開された)、これらをのぞくとカザンの監督作品は全部見られたわけであるが、グレゴリー・ペック主演の「紳士協定」はユダヤ人排斥思想にたいする抗議であり、ジーン・クレーン主演の「ピンキイ」は同様な蔑視観念が白人と黒人との混血娘にたいして抱かれる場合を取りあげ、良識に訴えかけようとした作品であった。アメリカにおいてカザンが一流監督とみなされるようになったのは、一九四七年と一九四九年に発表されたこれら二作によるのであって、彼の名声はこれ以後ずっと「暗黒の恐怖」「欲望という名の電車」「革命児サパタ」「綱渡りの男」を通して、そうたいして変っていない。いや、カザンは、何を作らせても巧い、偉い監督だというようにアメリカでは思われているようである。

 筆者はアカデミー賞とニューヨーク批評家賞とをあたえられた「紳士協定」を見ているが、これがかりにいま公開されたら、なんだ詰らない映画じゃないか、と言われるに違いないと思うのである。パン・フォーカスをさかんに使いながら、登場人物の出し入れの具合に面白い点があった。つまり、この映画では、人物が板ツキであるか、新しい登場人物が現われる場合には、かりにそれが室内であると背後のドアを開けて入ってきて、それから台詞のやりとりが行われ、ロング・ショットからミディアム・ショットになって、部屋のなかをグルグル歩き回るようにしながら劇的効果がたもたれていく。そして重要な台詞が喋られるときはキャメラはクロース・ショットの位置へと移動しながら、そうしたキッカケで次のシーンに切換えられるのであるが、この間登場人物が画面の右とか左へとかに姿を消すことは一度もないのである。
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