シドニー・ギリアットという監督が、いつかは素晴しい映画を作るに違いないと、僕は前から楽しみにしていた。それで「絶壁の彼方に」を見たときは、期待以上の出来であったので、すっかり嬉しくなってしまい、この監督のいままでの仕事について書くようにと言われたときも、すぐ引受けてしまったくらいだが、さて机に向かってみると、夕方からもう六時間以上もたつのに、なかなか思うように書き出せない。考えてみると、それは、シドニー・ギリアットが、いつもフランク・ローンダーと一緒に仕事をしていて、誰が書くときでも、ローンダーとギリアットのチームとして扱い、二人の才能を甲乙なしに認めていくというのが常識であるが、僕には、そう出来ない理由があるからである。