最近の期待作はヴィヴィアン・リー主演でアナトール・リトヴァクが目下監督中の「愛情は深い海の如く」であろう。イーストマン・カラーによるシネマスコープであることが期待をさらに大きくさせるが、この作品がテレンス・ラティガンの非常に評判になった芝居の映画化であり、ヴィヴィアン・リーにはまったくうってつけの内容的魅力を持っている。この戯曲が一九五二年三月六日にロンドンのダッチェス・シアターで初演されたときのヘスター・コリヤー役には名女優ペギー・アシュクロフトが扮したが、やがてロングランを打ち始め五〇〇回以上の上演記録を作った。もちろんブロードウェイでも上演されたが、西独における公演に際してはエリザベート・ベルクナーが主演した。ヘスターにはベルクもまたうってつけであろう。
役名の次に映画の配役と舞台での配役(カッコ内)を記しておくと、
ヘスター・コリヤー…ヴィヴィアン・リー(ペギー・アシュクロフト)、ウィリアム・コリヤー…エムリン・ウィリアムズ(ローランド・カルヴァー)、フレディ・ページ…ケネス・モア(ケネス・モア)、ミセス・エルトン…ダンディ・ニコルズ(バーバラ・リーク)、ミラー…エリック・ポートマン(ピーター・イーリング)、フィリップ・ウェルチ…アレック・マッコーエン(デーヴィッド・エイルマー)、アン・ウェルチ…モイラ・リスター(アン・ウォルフォード)、ジャッキー・ジャクスン…アーサー・ヒル(レーモンド・フランシス)。
映画ではウェルチ夫妻をケン・トンプスンというアメリカ人の伍長と、レヴュー・ガールで彼の恋人であるドーン・マックスウェルという若い女に変えてある。撮影は一月初旬からシェパートン・スタジオで開始、装置がヴィンセント・コルダ、撮影がジャック・ヒルドヤードである。
ヴィヴィアン・リーの映画出演は「欲望という名の電車」以来三年ぶりであり、最近はテレンス・ラティガンのこの作品につぐ「眠れる王女」でローレンス・オリヴィエと一緒に舞台で共演した。ケネス・モアは舞台と同役で映画にも出演している。「ジュヌヴィエーヴ」(註・日本は劇場未公開、「おかしなおかしな自動車競争」の題名でテレビ放映)「家のなかのドクター」(註・日本未公開)などの映画に最近出演している新人。エムリン・ウィリアムズとエリック・ポートマンの二名優が出演しているのも見応えがあるだろう。