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人の生き血の生温かさに至福の喜びを得る。
それがあの男の生きがいだった。
今も生け贄の非痛な叫びがこだまする…!
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世界的に有名なマダム・タッソーのろう人形館には、世界の英雄や天才に交じって、希代の犯罪者たちの人形も展示されている。“現代の吸血鬼”とよばれ、一九四〇年代のイギリスを騒がせたジョン・ヘイは、自分もその一人になりたいと遺言を残した。
二枚目俳優のようにハンサムな彼は、人形に着せるのは公判中に着用した服にしてくれというこまかい注文までつけたという。たしかに彼の犯した連続殺人は、後世に残されてしかるべき特異な残忍性にあふれている。