読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン
0
-1
kiji
0
1
1030649
0
完全図解 実録!刑務所の中
2
0
0
0
0
0
0
政治・社会
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
はじめに

『完全図解 実録!刑務所の中』
[著]坂本敏夫 [発行]二見書房


読了目安時間:4分
この記事が役に立った
0
| |
文字サイズ




 私は刑務所の官舎(かんしゃ)で生まれ、刑務官を辞めるまでの四十六年あまり、ずっと刑務所の(へい)のそばで暮らしていた。

 私の父方の祖父は、奄美大島(あまみおおしま)に生まれ育ち、大島紬(おおしまつむぎ)紋様(もんよう)デザイナーとして生計を立てていた。裕福な家だったが昭和六年、財産をすべて処分し、大いなる野望をもって大陸をめざした。中国の国際的な港湾都市・大連(だいれん)で金融業を開業、大きな成功を収めた。

 父は早稲田大学を卒業後、大連で政治家を目指していた。

 しかし、母と結婚すると、間もなく招集があり、陸軍に入隊。陸軍中尉として中隊を指揮し、沖縄戦線に参戦した。負傷しながらも生き延びた父は最後の激戦地・摩文仁(まぶに)で、昭和二十年六月二十一日を迎えた。アメリカ軍の陸海空からの圧倒的な攻撃の前に全滅した日である。軍人軍属のほか、女、子供、老人など、一般住民数十万人が犠牲になった。

 父は無数の爆弾片を浴び、腕などに貫通銃創(かんつうじゅうそう)を負ったが奇跡的に一命を取り止めた。

 アメリカ軍の病院で治療を受け、帰国したのは昭和二十一年三月だった。

 いっぽう、大連にいた母と祖父は、敗戦により財産をすべて失い、着のみ着のままで引き揚げを待った。佐世保に引き揚げてこられたのは、昭和二十二年三月だった。母は一時収容所で、戦死したものと思っていた父からのはがきを見つけた。父は熊本刑務所の看守を拝命していたのだった。

 父は昭和二十二年、上級幹部を養成する研修所に入所。研修を終了すると、ただちに看守長に昇進し、転勤になった。熊本から岩国(いわくに)少年刑務所へ。

 以後、水戸(みと)少年刑務所、豊多摩(とよたま)刑務所、習志野(ならしの)作業場、浦和(うらわ)刑務所を経て、昭和二十七年、法務省矯正(きょうせい)局に入った。官舎は巣鴨(すがも)プリズン、のちにGHQから返還され、ふたたび東京拘置所の看板を掲げる施設である。

 刑務所の塀を見て育ち、居所を転々とした私は、幼いころから刑務所だけには勤めたくないと思っていたが、人生とはおもしろいものである。二十七年あまりも勤めてしまった。

 刑務官を辞めた私は、社会に出て驚いた。刑務所のなかにいる受刑者よりも、悪い奴が山ほどいたからだ。しかも、犯罪を犯す(やから)だけではない。刑務官時代は同僚意識で信用していた警察官がもっとも悪い。人権を(たて)にして仕事をしないからだ。

 警察署の窓口は、困っているからなんとかしてくれと相談に行った善良な市民を「事件にならないと動けない」といって門前払いする。加害者と犯罪者には尊重すべき人権があって、被害者や善良な市民は殺されても人権はない! ということらしい。恐ろしい国になってしまったものだ。

 私は刑務所に入った犯罪者の姿、非公開の刑務所を知ってもらうことが、日本をよくすることだと思った。わかりやすい本として、『イラスト監獄辞典』、劇画『刑務所の中』がある。それは著者が自ら経験した刑務所の中をきわめて正確に書いてあり、非常によくできている。だが、それがすべてではない。

 刑務所の数だけ規則があり、管理する人間の好みで規則も変わるものなのだ。

 ガラス棒で肛門検査を受けるイラストを見ることがあるが、あんなことはやっていない。しかし、嘘でもない。不正品の持ちこみの疑いがある場合など、特別な状況下にあれば、どんなことをしてでも検査をする。もっとひどいことをやっているかもしれない。

 刑務所には、「逃がさない」「殺さない」「怪我をさせない」という原理原則があり、その目的を実現するために規則がある。規則は絶対に守らせる。守らない者は力ずくで型にあてはめる。反対に従順な者は優遇(ゆうぐう)される。刑務所は地獄にも天国にもなる。まさに千変万化(せんぺんばんか)、囚人の心の持ち方に合わせ、日々刻々と形を変えるところなのである。

 本書では、祖父、父、そして二十七年間の私の刑務官としての経験を総動員し、ふだん読者のみなさんが決して目にすることのない「刑務所の中」を紹介することにした。

二〇〇二年 初秋
坂本敏夫 
この記事は役に立ちましたか?

役に立った
0
残り:0文字/本文:1707文字
      この記事を収録している本
      レビューを書くレビューを書く

      今レビューすると30ポイントプレゼント! 今レビューすると15ポイントプレゼント! 犬耳書店で初めてのレビューはさらに30ポイント! ポイント詳細はこちら

      この本の目次