辱めを受け、自ら命を絶った少女のさまよえる魂を救ったひと言
「こんなことをいうと、笑われるかもしれませんが」
と前置きして、大下宏章(25歳)は、話しはじめた。
「霊にも国籍って、あるんでしょうか」
高校を出てすぐに宅配便の配達をはじめた大下は、以来7年、口数は少ないものの、まじめな仕事ぶりで、上司や同僚はむろん、顧客からの評判もいい。
それは、大下の勤める営業所の、新人歓迎会の席だった。
「あそこの林のそばでは気をつけろ。昔っから、男の幽霊が出るってよ」
「あの道で事故が多いのは、近くの墓場のせいらしい」