最近はイギリスの週刊雑誌が順調に入るようになったので、これらを通して、ロンドンでどんな映画が公開され、どんな評判をとっているかが、よく判るようになってきた。そのなかで最近最も注意を引いたのは、ロベルト・ロッセリーニ(「戦火のかなた」)の「奇蹟」という作品である。ある雑誌を見ると、詰らない映画だ、ロッセリーニもこの映画でとうとう味噌をつけてしまったと貶しているが、次に手にした雑誌の批評を読むと、すっかり興奮して賞めちぎっているといったありさまなのである。そして、貶した人たちよりは賞めた人たちのほうが、批評家としていままで間違いのないことを言ってきた人たちなのである。いずれにしろ「奇蹟」という映画が、題名の示すように宗教テーマの異色作であることは想像がつくが、次に紹介する四雑誌の批評から、その内容と特色がかなりはっきりと判ると思う。
(一)「ニューズ・レヴュー」というアメリカの「ニューズ・ウィーク」誌によく似た雑誌がある。まず最初にこの二月二日号を開いてみよう。