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忘れ去られた供養

『怪奇現象』
[著]新倉イワオ [発行] 河出書房新社


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・故郷の家と墓を捨てて


 科学の発達したこの世の中に心霊現象なんてものがあるとは、信じられない。そういいはる人もいるだろう。そういった現象を、思い込みの激しい人や現実逃避の傾向のある人の単なる錯覚だと考えてしまうのだ。

 しかし、それが自分の身の上に起こったとしたらどうだろう。それまでの考えも変わって、霊の存在についてそれまでの認識とはまったく違った考え方を持つようになるのではなかろうか。

 田中純子さんと、その母の佳代さん、そして純子さんの婚約者の佐藤充さんの体験した不可解な病気も、心霊現象としか説明のつかないものであった。

 朝から太陽の強い光がふりそそぐ夏の日。純子さんと母の佳代さんは、うっそうと生い茂る林を通りぬけ、小高い丘の中腹にある墓地に向かって歩いていた。

 娘は二十二歳の体力にものをいわせて難なく山道を登っていくが、五十歳になった母は鼻の頭に玉の汗をかいて、いかにも難儀そうである。

 ときどきふり返ってそんな母を見ると、七年前に夫を亡くした生活の苦労のようなものが体からにじみ出ている気がして、純子さんは思わず涙ぐみそうになってしまった。「早く母には楽をさせてあげたい」、そう心から思ったという。

 かれこれ三十分も歩いただろうか、二人は田中家の墓の前に立っていた。佳代さんはしゃがんで手を合わせながら、まだ墓地をつぶすことに懐疑の念を抱いているようだったが、それも時代の流れならばしかたがない。
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