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遅すぎた帰郷

『怪奇現象』
[著]新倉イワオ [発行] 河出書房新社


読了目安時間:13分
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・父を待ちわびる少年


 青く澄みきった五月晴れの空とは逆に、今日も一人河原に立つ菅沢源吉さんの胸中はいっこうに晴れない。静かに川面を見つめながら、過ぎ去った日々をふり返れば、心は切なく重く沈んでいく……。

 一年前、幼い孫の健太君は五歳になったばかりだった。父親は小さな漁船の船長であり、一度港を離れると、通常、半年は戻ってこない。その寂しさも手伝ってか、源吉さんと健太君とは、本当の親子以上に仲がよく、いつもペッタリと寄り添って行動をともにしていた。

 嫁の圭子さんは、夫が海に出ている間だけという約束で、近くの漁業組合の事務所で働いていたから、祖父と孫は二人っきりでいる時間も多かった。

 いつもは息子夫婦に一人っ子の健太君、それに源吉さんが加わっての四人暮らしだが、息子が航海中の間は、留守中の三人は一抹(いちまつ)の寂しさを抱きながらも、幸せな毎日を送っていた。

 源吉さんは、甘え放題の健太君に対し、たまにはけじめをつけなくてはと、要求を()ねつけたり、悪いイタズラには断固お仕置きの一つもと考えてはいるものの、いざその段になると腰砕けに終わってしまう。いずこも同じ、孫に甘いおじいちゃんなのであった。

 そんな甘いおじいちゃんに、嫁は少々まいっていたようだったが、幸い健太君も素直ないい子に育っていくようだし、その分だけ自分が厳しくすればと、苦笑しながら見過ごすことも多かった。

 家の裏手には川が流れていた。昼間二人きりになると、源吉さんは孫を連れて、よくその河原へ遊びに出かける。
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