◎イチローの真の魅力に学ぶ
◆メジャーリーガー、イチローの値段――「成果主義」時代の真の仕事人とは
二〇〇四年のシーズンからイチローはマリナーズと新たに四年契約を結んだ。年棒総額四年四四〇〇万ドル(約四六億二〇〇〇万円)、最大二〇〇万ドル(約二億一〇〇〇万円)の出来高払いが付加される総額四八億円余りの超大型契約である。
イチローの最初の三年間の契約は、総額一四〇〇万ドル(約一四億七〇〇〇万円)であるから、契約当時マリナーズの首脳陣は「イチローは安い買い物だった」とほくそ笑んでいたに違いない。
もちろんメジャーにはイチローを超える年棒を稼ぐスーパースターがたくさんいる。次に主な高額年棒選手を示してみよう。
二〇〇三年度ア・リーグのホームラン王で、二〇〇四年に交換トレードでレンジャーズからヤンキースへ移籍したアレックス・ロドリゲスの年棒は、二二〇〇万ドル(約二三億一〇〇〇万円)である。ロドリゲスはレンジャーズと一〇年契約を結んでおり、その総額はメジャー史上最高の二億五二〇〇万ドル(約二六四億六〇〇〇万円)である。
レッドソックスの主砲、マニー・ラミレスが一七一九万ドル(一八億五〇〇万円)、ヤンキースの看板選手デレク・ジーターは一五六〇万ドル(約一六億三八〇〇万円)である。日本最高年棒の選手は、二〇〇四年から横浜ベイスターズに復帰する佐々木主浩の六億五〇〇〇万円であるから、いかにメジャーの花形選手の年棒が高いかがこの表からもよくわかる。
◎主なメジャーリーガーの契約内容◎( )内は日本円:1ドル=105円で計算
1.アレックス・ロドリゲス(ヤンキース)
年俸2200万ドル(23.1億円)
2.カルロス・デルガド(ブルージェイズ)
年俸1870万ドル(19.6億円)
3.マニー・ラミレス(レッドソックス)
年俸1719万ドル(18.0億円)
4.モー・ボーン(メッツ)
年俸1717万ドル(18.0億円)
5.サミー・ソーサ(カブス)
年俸1688万ドル(17.7億円)
6.ケビン・ブラウン(ヤンキース)
年俸1571万ドル(16.5億円)
7.ショーン・グリーン(ドジャース)
年俸1567万ドル(16.5億円)
8.デレク・ジーター(ヤンキース)
年俸1560万ドル(16.4億円)
9.マイク・ピアザ(メッツ)
年俸1557万ドル(16.3億円)
10.ペドロ・マルチネス(レッドソックス)
年俸1550万ドル(16.3億円)
じつは、レンジャーズの現オーナーのトム・ヒックス氏が九七年に球団を買収した金額が二億五〇〇〇万ドルであるから、ロドリゲス選手の一〇年分の年俸総額が、その球団買収額を上回るという現象が起こった。
当時、ヒックス氏はこう語っていた。
「この契約は勝算のある投資だ。今後、ロドリゲス選手を獲得したことによるテレビ中継権料やチケット収入をはじめ、多くの分野で大幅な増収が見込めることは間違いない」
オーナーが考えていることはただ一つ。ロドリゲス選手への投資と、球団が獲得する利益のバランス。ヒックス氏はロドリゲス選手への投資が、球団経営にペイする確信が十分あったから決断したわけである。
日本のビジネス界においても、スポーツ選手の年俸制と似通ったシステムを積極的に取り入れる企業が今後急激に増えるだろう。
企業に利潤をもたらした人間にはそれに見合った報酬が支払われ、業績が上がらなければ報酬は激減する。時代が成果主義を要求している。
スペシャリストとしての才能に磨きをかけて、精一杯企業に貢献する。いや、スペシャリストでは不十分だ。あなたはプロフェッショナルでなければならない。