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恐怖の怨霊絵巻
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一の巻 怨みます 復讐する怨霊たち

『恐怖の怨霊絵巻』
[著]山口敏太郎 [発行] 河出書房新社


読了目安時間:26分
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うるし女〈大分の怪談〉


 豊後(ぶんご)にある男がいた。男の妻は一七歳で評判の美人であった。

 男は日頃妻にいっている言葉があった。
「私はおまえが先に亡くなっても、後妻をもらわないよ」

 それぐらい妻を愛していたのだ。

 こうして、しばらくのあいだ、夫婦仲も大層よく、幸せに暮らしていたが、あるとき風邪をこじらせ妻は亡くなってしまった。

 死ぬ間際、妻は奇妙な遺言(ゆいごん)を言い残す。
「もし、私が死んでも遺体を埋めたり、焼いたりしないで、内臓を取り出し、米をつめて全身に(うるし)を塗ってください。

 そして、手には(かね)をもたせ、庭にお堂をつくって祭ってください。そして、朝夕私にあいにきてください」

 妻を深く愛していた夫は、この言葉どおりに遺体を処理し、二年ほどは独り身でとおしたが、その後、友人のすすめで再婚することになった。

 新しい妻との生活がはじまってから、ある日のこと、妻が突然、離縁してくれといってきた。

 理由を聞いても、まったく答えようとしない。そうこうしているうちに、実家に帰ってしまった。

 その後、何人か妻を迎えたのだが、同じように逃げ帰ってしまう。
(おかしい、これはただごとではないな)

 いぶかしんだ夫は、祈祷(きとう)をした。すると五〇日ほどは何事もなく過ぎていった。
(どうやら、これで安心だわい)

 そう夫が思い、しばらくぶりに遊びにでかけた夜のこと。

 時刻は四つ時(夜一〇時)ごろだろうか。妻が侍女(じじょ)と話し込んでいると、庭から鉦のような音が聞こえてくる。
「いったい、こんな時間に何だろう」

 音はだんだんとこの家に近づいてくる。
「何なのでしょう、あの音は……」

 鉦の音におびえた妻と侍女は、扉に三重のかんぬきをして震えていた。

 その鉦の主は、家までくると、侍女がしたかんぬきをつぎつぎと開けていく。
「……がちゃり」

 一つ目のかんぬきが開く。
「……がちゃり」

 二つ目のかんぬきが開く。そして、鉦の音の主は、侍女と妻がいる部屋にある三つ目のかんぬきの前までやってきた。
「ここを開けなさい」

 恐ろしげな女の声が、屋敷に響いた。

 恐怖のあまり、なんともできず、妻たちが硬直(こうちょく)していると、鉦の主の女はこう告げた。
「……ふん、開けないのならしかたがない。でもねえ、今度私がここにきたときは、私と顔を合わせてもらいますよ」

 その声には明らかに敵意が含まれている。
「それから、今夜、私がきたことを夫には話してはいけないよ」

 鉦の音の女はそう告げると、音もなくでていった。

 妻はとても不安になり、帰宅した夫にすべてを話したが、夫は気にするふうもなく、ただ笑うばかりであった。
「それはキツネだろうよ。あまり気にすることではない」

 そういってまったく取り合わないばかりか、数日後の晩、妻を置いてふたたび出かけていった。

 妻と侍女が不安げに夜を過ごしていると、やがて、またあの不気味な鉦の音が聞こえてきた。
「あっ、あの鉦の音だわ」

 侍女と妻は恐怖で震え、あの夜のようにかんぬきを三重にかけた。だが、鉦の音の女は、かんぬきをつぎつぎと開けて入ってくる。
「あれほど、夫にはいうなといったのに……」

 三つ目のかんぬきを開けると、漆で全身が塗られた黒い女が部屋に入ってきた。長い髪をふりみだし、手には鉦がにぎられている。

 その女は、いきなり妻に飛びかかると、頭をわしづかみにし、その首をねじりとって外にでていった。

 騒ぎを聞いて、急きょ帰宅した夫が見たものは、正視できぬ新妻(にいづま)の姿だった。
「まさか……!」

 部屋の惨状(さんじょう)を確認したあと、庭のお堂にいってみた。
「やはり、お前だったのか」

 漆に全身を塗られ、鬼神のような顔になった前妻の前には、新妻の生首が置かれていた。
卑怯(ひきょう)者め」

 思わずののしったあと、夫は漆で塗られた前妻をお堂からひきずりおろした。すると、前妻は夫の(のど)元にかぶりつき、最後には殺してしまった。

 女の執念(しゅうねん)の、なんとも恐ろしいことよ……。

黒田城・お綱門の呪い〈福岡の怪談〉


 かつて福岡のシンボルだった黒田城には「お(つな)門」と呼ばれる恐るべき(たた)り門があった。

 この門にはお綱という女性の怨念(おんねん)が宿っており、その門の柱をうっかりさわったり、周辺にある石などを持ち帰ったりすると、原因不明の熱病になるとされていた。

 この門には悲劇の死を遂げたお綱の怨霊(おんりょう)が取り()いているのだ。


 この「お綱の怨霊事件」とは、江戸時代初期にさかのぼる。

 寛永七年(一六三〇年)、当時の黒田藩二代目藩主・忠之(ただゆき)が、参勤交代の帰路、大坂で遊女を落籍(らくせき)し、連れ帰った。
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