読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン

犬耳書店はRenta!へ統合いたします

(2021/11/26 追記)

犬耳書店の作品をRenta!に順次移行します。
詳しくはこちらでご確認いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

0
-1
kiji
0
1
1035967
0
深層説得術
2
0
0
0
0
0
0
生き方・教養
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
説得を妨げる警戒心の見分け方 あなたは、相手からこんな態度で説得を拒否されたことはないだろうか

『深層説得術』
[著]多湖輝 [発行]ゴマブックス


読了目安時間:7分
この記事が役に立った
0
| |
文字サイズ


*はじめのあいさつの言葉からして感情がこもっていない。

*意思を確認しても、曖昧で煮えきらない返答しかない。

*説得の本題に入ると、話すテンポが急に遅くなる。

*相づちを打つだけで、沈黙している。

*どうでもいいと思われるようなことを、微に入り細にわたって質問してくる。

*リラックスせずに、格式ばった姿勢をとりつづける。

*対話中、視線をはずしたり、しきりと視線を縦に動かす。


説得相手が急にていねいな言葉を使ったら、警戒心を抱いたと思っていい



 説得に際して、まず最初にぶつかるのが、相手の警戒心だ。初対面の人ならなおさらのこと、旧知の間柄でも、こちらの目的がわからないときは、相手は警戒心を抱く。それはちょうど、面をかぶった相手と相対するようなものだ。相手の真意は、面の奥にあってまるでわからない。相手がどう出てくるのかさっぱり見当がつかず、とりつくしまがない。しかし、この「面」に恐れをなして、引き下がってしまっては、戦わずして相手の軍門に下ってしまうことになる。


 それにも増して怖いのは、相手のこうした警戒心に気づかず、無神経な説得を試みた場合だ。このとき相手は、「面」をかぶるどころか、あなたにくるりと背を向け、さらにかたくなに心を閉ざしてしまうだろう。


 そこで、まず相手の心の中に、こうした警戒心があるかないか、相手の言葉や表情や態度を仔細に観察することが必要になってくる。


 概して、警戒心を抱いている人は、自分をさらけ出すのを極端に嫌い、言動に責任を負うのを避けようとする。そこで、あいさつや言葉に感情がさっぱりこもらず、紋切り型になりやすい。確かに、態度はていねいで、こちらを無視してはいないが、自分を押し殺しているので、ちょっとした会話でも無意味で無色透明な表現になってしまうことが多い。


 商談の席でも、話がトントン拍子に進んで、お互い和気あいあいになってきたとき、突然、それまで親しげに話していた相手が、語調を変えて、「お話はよくわかりました。それでは、社にもちかえりまして、検討させていただきます」と、事務的に突き放すことがある。期待も甘えも、その瞬間に吹き飛んでしまう。相手は、警戒心の「面」をこうしてかぶりなおしたわけだ。


 神経質な人ほど警戒心を持ちやすく、それだけに、失礼にならないようにと、しきりに気を遣い、それが言葉に表われると、煮えきらないあいまいな返事になる場合もよくある。その点、日本語は便利な言語で、あいまいな表現に満ちている。


 よく言われることだが、主語と動詞が離れているために、その中間に言葉が多くはいると、いったい何を言っているのかわからなくなる。また話の展開を論理的にするはずの接続語にも、「それはそうとして」「ともあれ」「……とはいえ」など、意味不明な用語が無数にある。これらを駆使して、さらに、言葉を言い換え、慎重に選び、話すテンポもふだんより遅くなってきたら、その人の深層にある警戒心はかなり深刻と思っていいだろう。知人のアメリカ人ビジネスマンは、日本企業との交渉のときには、目をつぶって相手の語調にじっと耳を傾けるという。通訳を通じて言葉の意味を知るよりも、このほうが日本側の“脈”がよく読みとれるというのだ。日本語の構造とも相まって、日本人の言葉は、テンポの振幅が欧米人よりも激しく、その遅れが、警戒心の昂まりを忠実に反映するからである。


 しかし、いっそうやっかいなのは、ほとんどしゃべらない相手である。何を言っても、「はい、ごもっとも」だけで、一方的に説得者に話させようとするのだ。これは、こちらに何か矛盾やおとし穴がないかと探っている証拠とみてまずまちがいない。


 これとはまったく逆に、微に入り細にわたって質問をしてくるのも、その裏に警戒心が働いているためと考えられる。それも、あまり本論とは関係のない話題に集中してくることが多く、これはちょうど、未知の動物に遭遇したイヌが、そのまわりをグルグル回りながらうなり声を発するのに似て、こちらのふところの中になかなか飛びこもうとしないのである。


警戒心は説得者との距離に表われる



 ところで警戒心は、言葉のみに表出されるわけではない。むしろ言葉を発するよりも先に、対面した相手の態度を、即座に読みとることができれば、それだけ対応も素早くなるだろう。その意味で、もっともたやすく警戒心を判別できるのは、相手の坐る位置である。

「距離を置いて付き合う」という言葉があるが、警戒する心理は、そのまま、物理的距離の隔りに表われるわけである。しかも、遠くに坐りたがる人にかぎって浅く腰かけるようで、これは無意識のうちに、いつでも逃げられるようにという深層心理が働いているからにちがいない。


 坐る位置ばかりでなく、姿勢もまた有力な表示器の役割を果たす。あるファッション企業の人事部長が、社員募集の面接のときに、応募者の姿勢を合否のポイントのひとつにしていると話してくれたことがある。それによると、あまりだらしのない姿勢も考えものだが、ピンと背筋を伸ばしたまま両手を膝の上で揃え、終始身じろぎもしない応募者には、躊躇なく×をつける、という。


 理由をたずねてみると、彼は、つぎのように答えてくれた。ファッションを扱う業務の性質上、さまざまな相手とフランクに交際する必要があり、人の心の動きにも柔軟に対応できる人材を集めたい。だから、とりつくしまのないような姿勢をとる人は、他人とのあいだにつねに壁をつくって、警戒おさおさ怠りないことを心掛けている証拠で、それを態度にまで出すようでは私どものような企業には向かないと、彼は言うのだ。確かに、一理ある考え方である。


 私たち心理学者が、カウンセリングのとき、とくに注意するのも、坐る位置と姿勢に関してで、第一にクライアントを適当な距離に坐らせ、第二に、自分もリラックスした姿勢をとるように心掛けている。そして第三に、視線をできるだけ直交しないように努めるということがある。これらはいずれも相手の警戒心を取り除く配慮なのだ。


 一般に、「心の窓」である眼を通じて、心のなかまでのぞかれることを嫌う警戒心の強い人は、わざと視線をはずして心の動揺を察知されるのを防ごうとする。それでいて、視線を縦にしきりに動かして、こちらの頭のてっぺんから足先までじっくりと観察しようとするために、目の動きが落ち着かなくなるのだ。遠くへ坐ろうとするのも、ひとつには、それだけ、縦に動かす度合が少なく、相手に気取られなくてすむからでもある。


 視線や態度は、このように、「口ほどにものを言」って、深層の警戒心を自然と表出してしまう。それらの微妙な動きに着目するのが、説得にあたり、相手に一歩先んずる秘訣と言えるだろう。


説得者が警戒心を抱く相手は、やはり説得者に対しても警戒心を抱く



 説得される側が警戒心を抱くのは、説得者の説得内容そのものに対してだと考えられて、今まで、説得の技術がいくつか開発されてきた。しかし、それらがかならずしも説得の成功に結びつかないのは、警戒心が、じつは、説得者のパーソナリティに向けられていることを見逃がしていたからである。つまり、心理学で言う対人認知のあり方が警戒心を生むことのほうが、説得の場面においては多いのだ。


 私たちは、家族の者や、親しい友人・知人に対しては、よほど特別な事情でもないかぎり、警戒心を抱かないが、初対面の人には、意識するしないにかかわらず、何らかの警戒心を抱いている。これはまだ相手をよく知らず、正確な認知ができていないからである。しかし、いったん意気投合すると、心の枠を取り外して、「ほかならぬあなたが言うのなら、ひと肌脱ぎましよう」などと、一も二もなくOKしてしまうこともある。説得内容よりも説得者への認知が優先するのだ。


 だから逆に、相手のパーソナリティが自分とはまったく相容れないものだと認知してしまうと、とたんに不快になり、警戒心を強めることがある。アメリカで行なわれた調査だが、新入社員に、上役に対する好感情・悪感情を十点法で自己採点させ、つぎに、こんどは上役に、各部下とのコミュニケーションの度合をやはり十点法で採点してもらったところ、両者の結果はほとんど符合したという。部下が「快い」と思っている上役とは意思の疎通もうまくいくが、「不快」な上役とは、たとえ仕事のことでも、通じ合わないのである。


 この堅固な城を崩して説得するには、深層心理に食い入って、こちらのパーソナリティへの好感・共感を相手に植えつけることが必要になるのだ。



この記事は役に立ちましたか?

役に立った
0
残り:0文字/本文:3493文字
この記事を買った人はこれも買っています
      この記事を収録している本
      この本で最も売れている記事
      レビューを書くレビューを書く

      レビューを書いてポイントゲット!【詳細はこちら】

      この本の目次