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死なないための智恵
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雑学
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はじめに

『死なないための智恵』
[著]上野正彦 [発行]イースト・プレス


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 最近、秋葉原事件のような動機もはっきりせず、しかも不特定多数の人々を殺傷するような事件が多くなった。なぜだろう。

 私は昭和の時代に東京都の監察医を三十年間やっていた。二万体もの変死者の検死、解剖をし、警察官とともに事件を処理してきた。事件は、加害者と被害者の間の金や異性がらみの怨恨(えんこん)が主であったから、犯人像も三、四十代の男性といえば七、八割がたは当たっていたが、今はそう単純ではなくなった。まず犯人は男か女か、そして大人か子どもかも考えなければならず、さらには日本人か外国人かとその対象は多岐にわたり、複雑になっている。

 時代の変遷とともに人々の生活や考えも変わってきているから、事件もまた変わるのは当然のことである。それではなぜ、不特定多数の人々が狙われるようになったのかといわれると、むずかしくなるが、ひとつの考え方として私はこう思っている。

 たとえば中学や高校へ行っても、友達ができない。クラスにもなじめず、やがていじめの対象になって孤立する。不登校になり、家族との会話もなく自室に閉じこもる。ひとりでもパソコンやゲームがあるから、孤立感はない。機械相手だから人間相手と違って煩わしさもない。自分の思うように機械は作動するから、相手を気づかう必要はない。社会から隔絶した世界に浸っているから、自己中心的になり、思いやりのない人間になる。

 そのうちに社会に出て自立しなければならない年代になる。親にすすめられ、仕方なく勤めに出るが、同僚にも会社にもなじめず、家族からも見離されていく。

 つらい自分に比べ、周囲の人々は楽しそうに見える。自分を受け入れてくれない社会や、楽しそうな周囲の人はすべて憎らしく、許せない存在になってくる。そんな思いが高まり、爆発したのが、秋葉原のような事件ではないだろうか。

 特定の個人に対する怨恨や嫌悪ではない。自分以外の周囲の人すべてがいやなのである。だから不特定多数が対象になる。一口では言い表せない複雑な理由が鬱積(うっせき)しているから、動機は不明と表現されるが、犯人にはそれなりに明白な動機があるのである。

 しかしそれは社会に受け入れられない手前勝手な理屈であり、理解し難い動機でもあるから、不可解な事件といわれているのであろう。

 これまで私はテレビや雑誌などで事件の解説をしてきたが、「犯人像」や「死因」に関することが主であった。監察医としての経歴から当然のことであろう。

 マスコミでの解説はそこで終わるが、法医学の立場からすれば、あと半分の解説が残っているのである。たとえば、医者は患者の病気を治せばよいのだが、広い視野で医学を見れば治すだけではなく、病気にかからぬように「予防」し、さらに病気のない世の中にしていくのが、医学本来の目的である。

 法医学も同じで、解剖して死因を「解明」するだけではなく、犯罪や事件が起こらぬように「予防」し、撲滅(ぼくめつ)対策などを考えるのが本来の目的である。だから法医学は、内科や外科など「治療医学」に対して、「予防医学」とも「社会医学」ともいわれているのである。

 今回は従来触れなかった「予防」の部分に踏み込んで、事件に遭遇した際、どうすればいいのか「死なないための智恵」について書いたのである。

 本書を通じて、法医学が「社会医学」として、犯罪の防止、社会秩序の維持に貢献していることを、ご理解いただければ幸いである。


本書は、実際に世間を賑わせた事件(事故)を例に、監察医としての長年の経験と医学的な見地から、事件発生の原因や死因を明らかにし、事件を未然に防ぐための策や、人命を救助する方法、被害を軽減させるための智恵について、解説・提案しています
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