『壁を破る言葉』
[著]岡本太郎
[監修]岡本敏子
[発行]イースト・プレス
生きる日のよろこび、悲しみ。
一日一日が新しい彩りをもって息づいている。
実際の世界は芸術なんてものとは関わりなく、
政治的に、科学的に、荒々しく猛烈に動いている。
いったいなぜ描くのか。
まったく無意味な気がする。
何かを描かなきゃならないから描くのか。
……ばかばかしい。人が喜ぶからだろうか。
……人をよろこばせるなんて、卑しい。
美のため。社会のため。……糞くらえ
だが、身をもって激しく抵抗をたしかめながら、
猛烈に生きていくところに、人間としての歓びがあるんだ。
芸術はたんに見るもの、味わうものではなく、
創るもの、いや創らなければならないものだ。
惰性的な空気の死毒におかされないために、
人間は創造しなければならない。
自分をじっさいそうである以上に見たがったり、
また見せようとしたり、あるいは逆に、
実力以下に感じて卑屈になってみたり、
また自己防衛本能から
安全なカラの中にはいって身をまもるために、
わざと自分を低くみせようとすること、