『壁を破る言葉』
[著]岡本太郎
[監修]岡本敏子
[発行]イースト・プレス
人間は誰だって、
この世に生まれようとして生まれてきたわけじゃない。
でも、この世に出てきたからには、
誰だっておもしろい生き方をしたいよね。
危険な条件のほうに自分の運命を賭けるほうが
情熱がわいてくるものだ。
おのれだけが自分じゃない。
向こうから追ってくる運命というのも、自分自身なんだよ。
絶望のなかに生きることこそが、おもしろい。
そう思って生きる以外にない、それがほんとうの生きがいなんだ。
人間は自然の中からただ生まれ出てきたものではない。
「人間」は作られるものだ。
人間自身によって。
だからまた人間の手で壊さなければ、
宇宙に還元されなければならない。
素朴に、無邪気に、幼児のような眼をみはらなければ、
世界はふくらまない。
自然の樹木がわれを忘れたように伸びひろがっている、
凝滞ない美しさ。
そんな、そのままの顔。自分の顔なんか忘れているような、
ふくらんだ表情こそが素晴らしい。
自分の打ったボールがどこへ飛ぼうがかまわない。
スカッと飛びさえすれば、いい気持ちなんだ。