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タモリ学 タモリにとってタモリとは何か?
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エンタメ
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序 タモリにとって『いいとも』終了とは何か

『タモリ学 タモリにとってタモリとは何か?』
[著]戸部田誠(てれびのスキマ) [発行]イースト・プレス


読了目安時間:5分
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 「俺、聞いたんやけど『いいとも』終わるってホンマ?」



 2013年1022日、火曜日。突然、『笑っていいとも!』にエンディングゲストとして“乱入”した(しょう)(ふく)(てい)(つる)()は、タモリに向かってそう問いただした。周囲がざわつく中、タモリは事も無げに淡々と言った。


 「来年の3月で『いいとも』終わる」


 観客はもちろん、出演者たちも驚きの声をあげる。それもそのはずだ。このことを知っていたのは舞台上ではタモリ本人と笑福亭鶴瓶、そして(なか)()(まさ)(ひろ)だけだった。番組のプロデューサーすら、当日それを知ったという。ごく限られたフジテレビの上層部とタモリの話し合いで決められたものだったらしい。


 終了の決定を鶴瓶が知ったのは、発表の前日だった。タモリから直接電話があり、「火曜日に発表するから来てくれ」と告げられたという。


 (おお)()(ひかり)は、その日の深夜に放送された『JUNK 爆笑問題カーボーイ』(TBSラジオ)で「寂しいですよ」と繰り返した。



 「ムカついたんですよ。だって知らないんですもん」「本当に力抜けました。そりゃねぇよ、水臭いじゃないかと」



 タモリはもともと、気配りの人間だ。


 たとえば12年の『27時間テレビ』の司会をタモリが務めることが決まった時も、まだ何も発表されていない半年前から「ちょっと太田いい?」とわざわざ楽屋を訪ね、「この夏ちょっと協力してもらいたい事があるんだ」と料亭に誘い、「まぁ、よろしく頼む」と伝えたというほどだ。


 『いいとも』終了の発表の後、タモリはレギュラー陣の楽屋を訪れこう謝罪したという。



 「みなさんに挨拶してから発表すべきが、(情報)漏れを懸念して本番で発表してしまった。ごめんね」[1]



 今度こそ来るぞ、来るぞ、と思っていても、結局、来ないのが『いいとも』の終了だった。しかし、遂にそれが現実のものとなってしまった。


 前兆はあった。


 『いいとも』初回放送時から続く「テレフォンショッキング」、その基本コンセプトと言える、ゲストの「お友達紹介」が12年4月に廃止された。それによって29年間受け継がれてきた「友達の輪」が途絶えることになる。その後はゲストではなくタモリ自身が「明日のゲスト紹介」をし、電話で出演依頼を行う形に変更された。


 また同年10月には、ほぼすべてのコーナーに関して、タモリが進行役から外れた。


 そして翌年7月には、なんの説明も行われないままに、ついにタモリが一切出演しないコーナーができてしまった。


 「このオッサン、この頃バッくれるやろ!」


 木曜レギュラーでタモリと長い盟友関係にある笑福亭鶴瓶は、7月4日の『いいとも』オープニングコーナーで、タモリの腕を掴みながら叫んだ。あたかもタモリをどこにも行かせまいとするかのように。


 タモリが番組自体を休むことはこれまでもあった。だが、いるにもかかわらず表に出てこないのは異常だ。


 鶴瓶はタモリ不在のコーナーが始まると絶叫した。「どこいったんや、タモリ!」と。


 「ほくろ鑑定」のコーナーでも、やはりタモリ不在だった。ほくろ鑑定をするのは漫才コンビ・ダックス。の(みや)(もと)()(こう)


 そこで鶴瓶は突然、「タモさん、いないでしょ。(ここに)呼ぶためにはなんかちゃうことせないかん」と、本来の企画を潰してダックス。に漫才を行うよう要求、ダックス。は慌てふためきながらもなんとかやり遂げた。その機転に称賛を贈りながらも、「放送事故になったらおもろいかな」と思っていたと鶴瓶は笑った。


 テレビにおいてもっとも重要で面白いのは「ハプニング」であるという部分で、タモリと考えが一致する鶴瓶ならではの発想だ。天岩戸に隠れた太陽神・天照大御神を表に引きずり出すかのごとく、鶴瓶はタモリのためにハプニングを用意しようとした。


 そして最後に鶴瓶はまた「タモリ、出てこーい!」と叫ぶのだった。


 タモリ不在のコーナーができたことについて、太田がプロデューサーに説明を求めると、「タモリさんの思う所があってコーナーをいくつか休む」と言われたという。


 数週間後、頃合いを見てタモリの楽屋を訪れた太田が「どうですか? サボってみて。調子はどうですか」と尋ねると、タモリは「いやー、いいねぇ。これは結構ね。無くてもそれはそれでね、そっちのほうが良いんだよ、自分的にも」と答えたという[2]。


 そしてついにタモリは『いいとも』の終了を自ら決断。中居正広がレギュラーの火曜日に鶴瓶を“乱入”させるという形で発表した。


 現在の『いいとも』のリーダーといっていい鶴瓶と中居を揃わせて発表したのは、やはり粋だ。“乱入”という形をとったのも、まさしく生放送のハプニング感を演出したかったのだろう。でありながらそれ以上に過剰な方向には持っていかず、まったく特別でもなんでもない日にさらりと発表したのも、タモリらしかった。



 「30(歳)からこの世界入ったじゃん。スルスルスルって横滑りして入って、30から6年後にこの番組入ったの。『いいとも』で、芸能人として初めて格好がついたんで」



 『いいとも』終了を発表したタモリは、淡々とそう続けた。そして謝辞を述べ、一礼するのだった。



 「32年、フジテレビがずーっと守ってくれたんだ。本当にこれは感謝してもしきれない。出演者の皆さんにもお世話になって。国民の皆さんにも、どっち向いても感謝です。ありがとうございます」



 タモリにとって『いいとも』とはいったいなんだったのだろう。


 また、僕らにとって『いいとも』とは、あるいは「タモリ」とはなんなのだろうか。


 そしてタモリはいつものようにその日の番組を締めくくった。


 「明日も、見てくれるかな?」



 『いいとも』がない「明日」が現実になってしまうなんて、とても信じられない、いや、信じたくなかった。







   [1] 『爆笑問題の日曜サンデー』TBSラジオ(131117


   [2] 『JUNK 爆笑問題カーボーイ』TBSラジオ(131022

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