『人間は瞬間瞬間に、いのちを捨てるために生きている。』
[著]岡本太郎
[発行]イースト・プレス
先日、テレビの「題名のない音楽会」が奇妙なことを申し込んできた。チャップリンは楽譜も書けないのに作曲した。それが大変な名曲で、評判だった。一つ、あの流儀で作曲して貰えませんか、というのである。
私はあらゆることにぶつかり、問題をひろげたいと常に思っている。全人間的であるためには、うまかろうがまずかろうが、何でもやるべきだ。やらなければ本当の人間としての責任がもてない、と考える。
それにしても、音楽は苦手だ。まして作曲ともなれば……。だが待てよ。私は、主義主張ばかりではなく、やったことのない、またこいつは無理だと思うようなことにぶつかると、とたんに、じゃあやってみようか、とふるいたってしまうのである。