最期の日はカウントダウンされていた
1965年2月21日、黒人解放運動の指導者として世界各地で演説を行ってきたマルコムXは、この日が最後の演説になることをどこかで予感していたかもしれない。
この日マルコムはOAAU(アフロ・アメリカン統一機構)の集会のためにハーレムにあるオーデュボン・ボールルームに赴いた。しかし、この日は集会に参加するはずだったゲストが急用だといって全員欠席するなど、いつもとどこか様子が違っていた。
それでも集会は予定通り開始された。イスラム教徒の挨拶が終わり、マルコムが演壇に向かう。その時、会場の真ん中あたりでふたりの男が喧嘩をはじめ、演壇付近で警備に当たっていたマルコムのボディーガードがそちらに移動した。