ある夏の日の夕方のことである。
都内某シティホテルの24階の廊下を歩いていたEさん(25)は、ふと異様な気配に足を止めた。うめき声とも、泣き声ともつかない妙な声が、もれ伝わってくるのである。
「?」
もしや病人でも、と耳をそばだてたが、すぐに男女のムツゴトの声とわかり、
(明るいうちから、しょうがないな)
と再び歩き出そうとした。
……というと、防音がなってないとんでもないホテルだ、一流じゃないなと思われるかもしれないが、このホテル、壁には鉄板も入っているし、マル適マークもついた一流ホテルである。