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アジア 反日と親日の正体
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政治・社会
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はじめに

『アジア 反日と親日の正体』
[著]酒井亨 [発行]イースト・プレス


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 近年、「アジア経済の成長」「アジアの時代」が叫ばれている割には、アジアの国際関係はぎくしゃくしている。戦争が相次いでいる中東の激しさには及ばないとはいえ、領土問題、歴史認識、海洋資源、水資源、環境汚染などをめぐって紛争が絶えないのは事実だ。


 日本から外に出たことがない多くの人は、あたかも日中間の(せん)(かく)(しよ)(とう)問題、日韓間の(たけ)(しま)問題のように、日本だけが周辺国と紛争を抱えているように考えているのではないか。


 政治的な立場の違いもあろう。それを中国や韓国が過去の歴史にこだわるだけのけしからん国と見るか(現在はこれが圧倒的に多いだろう)、()()でも日本に非があると見るか、人それぞれだろう。


 だがアジアにおける紛争は日本と直接関係しているものだけではない。結論を先に述べると、中国が他国と関係した紛争や対立のほうが、日本が関わっているものより圧倒的に多い。アジアではそんなトラブルメーカーの中国に対して反感が高まっている。


 アジア諸国では中国を含め、アニメ・漫画・コスプレに代表される日本の大衆文化への関心と人気が高まり、日本への好感度は上昇する傾向にある。


 政治・外交レベルでの紛争激化と、若者を中心とした市民レベルでの日本への好感や期待。一見矛盾しているように見える動きが同時に起こっているのが今のアジアなのである。


 この本は、一一年にわたって台湾に滞在し、他のアジア諸国も見て回った筆者の見聞・研究の経験をもとに、アジアで現実にビジネスを展開するうえで知っておくべき問題についてまとめたものである。



 なぜ筆者がこの本を執筆しようと思ったのか、まずは自分の経歴について紹介しておこう。筆者は大学卒業後、地方紙などに新聞記事を配信する共同通信社に入り、記者として国内の地方と経済畑を歩んだ。学生時代から台湾と韓国をしばしば訪れ、台湾政治を主な研究対象としていたので、特派員として台湾に派遣されることを希望していた。しかし社内政治などの関係で無理だとわかったので、二〇〇〇年、台湾で初めての政権交代が果たされたことを機に会社を辞め、台湾に移り住んだ。台湾での生活は二〇一二年三月に引き揚げるまで一一年に及んだが、その間台湾の政治の現場を間近で見る一方で、一〇冊前後の著作を発表してきた。


 台湾ではフリーな立場だったので、様々な国に出かけた。これまで四〇カ国を訪れたことがあるが、中でも台湾から近い韓国、マレーシア、フィリピンは回数が多い。台湾から遠く離れたところでも、たとえば中東の文化の中心地レバノン、昔のハプスブルク帝国の文化が残る中欧のハンガリーも気に入っている。


 それはともかく、専門は台湾政治であり、特に一九八〇年代以来の民主化過程を韓国と比較することにある。ただそれだけでは視野が狭くなるし、台湾を取り巻く国際環境が複雑であることから、他国についても見聞きすることが必要だった。そのためにマレーシア、フィリピン、レバノン、ハンガリーなどの国々を訪れた。この本ではそうした筆者の東アジア情勢に関する専門的な研究や、現地に滞在して得た体験と知識を基に述べている。



 台湾に一一年も在住したということは、日本だけにしか住んだことがない場合よりも、アジア諸国のことがよく見えるし、理解できる部分も大きい。


 ちなみに漢字の四字熟語に「(そう)()(かん)()」という言葉がある。あまり現代日本語では使われないが、唐の詩人・(もう)(こう)の詩「登科後」に由来する熟語で、物をあわただしく大ざっぱにしか観察せず、理解の深度が浅いことをいう。普通の観光旅行や短期の駐在はちょうどこれにあたるだろう。


 筆者は旅行をする際に「走馬看花」でなく、社会を深く観察することを心掛けてきた。単に観光地を見て回るだけでなく(それはそれで重要だが)、何よりもその現地の人との出会いや対話を重視してきた。良い思い出もあるが、時には気まずく、(じく)()たる体験もある。台湾についても、多くの日本人駐在員は日本語を主体に、北京語もわずかながら使い、一部の台湾人としか付き合わない人が多い。これに対して筆者は、台湾人に囲まれて仕事をしたり暮らしたりしてきた。台湾人の日常語は、北京語よりも台湾語や(はつ)()()である。筆者はそのうち多数派の台湾語を主に使っていたのだが、おかげで台湾人の機微というか本音に触れることができたと思う。


 しかしだからこそ、台湾人の素晴らしい部分も台湾移住以前よりも感じ取ることができたが、同時に台湾に住むまでは見えなかった台湾人の弱点や醜い部分にも出会ってきた。


 そうした部分を指摘すると「あなたは台湾に厳しすぎる」と言われることもある。だが、筆者に言わせればそれなら一度住んでみてほしいと思う。外国で暮らすことの厳しさ、その国の負の面は実際にその国、その土地に住まなければ見えないものである。


 もちろん台湾は日本の影響が強く、経済・社会水準も日本に近い。だが、それでも日本と大きな落差、相違があり、その意味では、日本よりもはるかにその他のアジア諸国の水準に近い部分が多い。そして意外に知られていないことだが、台湾と東南アジアは、地理的に近いだけでなく人的交流もかなり活発なのである。



 領土問題や歴史認識で隣国ともめている今こそ、われわれ日本人は、(日本以外の)アジア諸国に関する過度な幻想や遠慮を捨てて、冷徹・冷静な目で観察すべきである。その一方でいわゆるネトウヨ(インターネット右翼)や排外主義者のように過剰に恐れたり排斥したりするべきでもない。


 過度な幻想と過剰な排斥は、実は表裏一体である。いずれも相手のことがわかっていないからこそ起こるものである。幻想はもちろん排斥も、マスコミなどが実態とかけ離れた「成長するアジア」といったような幻想を振りまいてきたことに原因があるように思う。そこで本書は、アジア諸国が抱える課題や限界など負の側面をなるべく多く指摘する。その反面、最近の経済第一主義では見落とされがちなアジア諸国の文化的側面、ソフトパワーの魅力についても触れることにした。


 外国との付き合いには、日本人の常識が通じなかったり、一筋縄で行かなかったりすることが多い。そうである以上は、最初からプラス面だけを語り幻想を振りまくよりも、マイナス面を熟知しておけば、心理的な準備や対策も可能で、無用な損失や対立を避けることにもつながるからである。

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