『アジア 反日と親日の正体』
[著]酒井亨
[発行]イースト・プレス
香港の地位はもともと独特だった。これは一八四〇年に第一次アヘン戦争で清国が敗北し、香港島を英国に割譲したのが始まりだ。香港は英国植民地の自由貿易港となり、二〇世紀に入ってから中継貿易で発展した。長く中国であるようでそうではないところだったが、一九九七年、中国に「返還」された。
その後は「中華人民共和国香港特別行政区」(香港特区)として、中国内地(本土)と異なる英国式制度を維持し、「一国両制(一国二制度)」のモデルとされる。ただし陰に陽に中国の圧力を感じるため、言論の自由は萎縮しがちで、一九九〇年代以前のようなアジアの文化発信地としての地位は失われた。