『アジア 反日と親日の正体』
[著]酒井亨
[発行]イースト・プレス
高い王室の権威
タイは日本と同じ立憲君主制国家であり、上座部仏教が国教でタイ人は信仰心が厚い。ただし南部にはイスラーム教徒もいるし、一部キリスト教徒もいる。
歴史的には欧米帝国主義の植民地が多かったアジアにあって、インドシナを支配したフランスと、ビルマ(ミャンマー)を支配した英国の緩衝地帯と見なされ独立を守ったことで知られている。ただし経済的には英国が浸透し、事実上英国の植民地になっていた。その関係で上流層の留学先は、米国よりも英国が好まれ、英語も英国式が支配的だ。
この国の最大の特徴は君主制であることだ。ただし戦後批判もできるようになった日本の皇室と違い、タイで王室批判は完全にタブーで、不敬罪も残っている。国王の健康状態やルーツに関して言及することも不敬罪の対象となる。リベラル派の知人は「王室への敬意に基づく建設的な議論をすることすらできない」という不満を漏らしていたし、不敬罪が時の政権に悪用されているという面も指摘されているが、それぞれの国内事情であり、外国人が口をはさむことは差し控えたい。