『アジア 反日と親日の正体』
[著]酒井亨
[発行]イースト・プレス
アジアを代表する多民族社会
マレーシアは現在東南アジアでは一人当たりのGDPが最も高く、生活水準も相対的に高いところである。
あまり注目されないが、タイと同じく立憲君主制国家で、各州のスルタン(地方君主)が輪番で「国王」になる仕組みだ。だがタイに比べると各君主家は土着のマレー系の間では尊敬されているが、存在感は薄い。その分、首相の存在感や権限が強い。
この国の特徴は、民族・文化の多様性が明確なところである。アジアの多くの国では多民族・多文化であっても、実際には中核となる民族の色が強く、他の多くの民族は少数民族として存在感が薄い(中国が典型)のに対して、マレーシアの場合は中核のブミプトラ(土地の子の意味、マレー系)が六七%と最も多いが、少数派の華人も二五%、インド系も七%などと、日常的にも無視できない比率だ。また当然それぞれの混血も存在するし、少数のポルトガル系、オランダ系も存在する。
宗教もブミプトラの多くは、イスラーム教スンナ派だが、東マレーシアではキリスト教や土着信仰もある。