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田中角栄 権力の源泉
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政治・社会
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田中派旗揚げ、福田派のスパイ

『田中角栄 権力の源泉』
[著]大下英治 [発行]イースト・プレス


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 通常国会の会期末も押し迫った昭和四七年五月九日の夜、柳橋の料亭「いな垣」の大広間で、いよいよ田中派結成の旗揚げがおこなわれた。


 この日、午後の三時ごろには雨がぱらついていたけれども、夜になり、すっかり雨はやんでいた。


 この会合の呼びかけ人は、佐藤派の長老木村武雄であった。会費は二〇〇〇円で、縦に並べられた細長いテーブルの上に、黒塗りの弁当箱が置かれているだけの質素な宴席であった。


 しかし、参加者は、木村の予想をはるかに上まわる八一人であった。


 木村は、八一人もの顔を一人ひとり眺めながら、いっそうの闘志をわきたたせていた。

〈これで、福田との勝負はあったな……


 衆議院では、佐藤派から、二階堂進、(かめ)(おか)(たか)()()(だち)(あつ)()(かり)()(ただ)()()(ぶち)(けい)(ぞう)(はし)(もと)(りゆう)()(ろう)(おお)(むら)(じよう)()(みの)()(のぼる)、山下元利、小沢一郎、羽田孜、(かじ)(やま)(せい)(ろく)、高鳥修、奥田敬和、(いし)()(はじめ)()(とう)(めぐみ)、中山利生、佐藤守良、林義郎、(さい)(とう)(しげ)()()、野中英二、綿(わた)(ぬき)(たみ)(すけ)、山田久就……ら三八人。それに、無派閥の渡部恒三、小沢辰男が参加し、四〇人であった。さらに、予想外だったのは、参議院から、衆議院を上まわる四一人が、参加したことであった。メンバーは、郡祐一、平島敏夫、田口長治郎、長谷川仁、前田佳都男……らであった。


 木村は、確信を持った。

〈これで(参議院議長の)重宗王国時代に築かれた「参議院は福田」という伝説は、完全に吹き飛んでしまった〉


 ただし、出席者の参議院議員の長谷川仁は、福田赳夫色の強い議員で、その周囲の議員から、疑いの声があがった。

「あんたは、福田派のスパイじゃないか!


 このような席には、かならず敵陣営からの偵察隊がしのび込むものであった。


 しかし、八一人というのは、佐藤派一二四人中約三分の二の勢力にあたる。宴席は、熱気に包まれていた。木村代議士が、上機嫌であいさつした。

「この日の会合は、歴史的に意義あるものにしたい。佐藤政権を八年間支えてきたのは、われわれが一致結束してきたからで、佐藤総理がやめるまで、最善の努力をしたい。しかし、いずれ総理もやめ、国民に信を問う機会もあると思うが、次の総選挙に勝つためには、国民的人気のある人が自民党総裁になるべきだ。その意味で、田中角栄氏は国民の信を託すに十分な人物で、今後、田中氏と行動をともにしたい」


 木村は、一年生議員の小沢一郎に、乾杯の音頭をとるよう指名した。


 小沢は、いきなり指名を受け、立ち上がるや、高ぶる気持ちで、声を張り上げた。

「田中内閣の樹立をめざして、頑張ろう! 乾杯!


 小沢は、この日の会合を決起大会にしよう、と決めていた。その決意が、田中内閣の樹立をめざして、という言葉になったのであった。


 その威勢のいい声をきっかけに、出席者の気持ちも、吹っ切れた。堰を切ったように出席者がつぎつぎに立ち上がり、田中擁立の熱弁をふるいはじめた。


 口火を切った小沢一郎も、興奮していた。

〈うまく火がついたぞ。よかった、よかった〉


 彼らのあいさつが終わったのち、木村武雄は、ふたたび口を開いた。

「ここに集まった同志は、田中氏と政治行動をともにする決意であることを確認したい」


 そうしめくくり、出席者の了承を得た。


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