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日本人が知らなかった歴史の顛末
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歴史
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『万葉集』編纂後、なぜ大伴家持は“歌わぬ歌人”となったのか

『日本人が知らなかった歴史の顛末』
[編]歴史の謎研究会 [発行]青春出版社


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『万葉集』の編者の一人とされる大伴家持(おおとものやかもち)。文字通り、奈良時代を代表する歌人で、千二百年以上たった今日でも家持の歌は広く愛誦されている。家持の作品で、年代が分かる最初のものは七三三年の、

振り分けて三日月見れば一目見し人の
眉引き思ほゆるかも(巻六・九九四)


 である。家持の生年は不詳だが、このとき十六歳ごろと思われる。「三日月」から女の眉を連想し、美しい女性を想像して詠んだものだが、少年・家持のういういしい恋の芽生えがしのばれる。

 そして、『万葉集』最後の歌が、七五九年正月に因幡国庁で詠んだ、

新しき年の初めの初春の今日降る雪の
いやしけ吉事(よごと)(巻二十・四五一六)


 とされている。七三三年の時点で十六歳とするなら、このとき四十二歳である。以来、家持はなぜか歌を一切作らなくなり、七八五年(六十八歳?)に亡くなるまで「歌わぬ歌人」を通している。一体、家持のその後に何があったのだろうか。

 大納言・大伴安麻呂の孫として生まれた家持。古代豪族であった大伴氏の祖先は天皇家に匹敵する勢力を誇っており、大和朝廷成立後は軍事力を司る有力豪族として天皇家に仕えていた。

 七四六年、若き家持は越中国守として赴任する。このころ有名な「海行かば」の長歌を作り、天皇への忠誠を誓っている。

海行かば水漬(みづ)(かばね) 山行かば草()す屍
大皇(おおきみ)の辺にこそ死なめ 顧みはせじ……


 悲愴ともいえる決意だった。近代になってこの長歌が軍当局により、天皇讃美の目的で利用されたのはご存じのとおり。

 それはともかく、その五年後の七五一年、家持は少納言となって帰京する。この前後が歌人として最も脂が乗った時期で、歌道にいそしむ日々を過ごす。しかし、順風満帆だった家持の人生にやがて陰りが生じてくる。

 七五七年、親しかった橘奈良麻呂(たちばなのならまろ)謀叛(むほん)未遂事件が起こり、大伴氏の主だった者が失脚する。当時の政治は、光明皇太后の寵愛を後ろ盾にした藤原仲麻呂(なかまろ)(別名・恵美押勝(えみのおしかつ))が実権を握っていた。奈良麻呂はこの仲麻呂を亡き者にしようと画策するが、失敗に終わる。家持も嫌疑をかけられ、薩摩守に左遷させられてしまう。

 そんな家持も、七六四年の「恵美押勝の乱」によって仲麻呂が戦死するや中央政界に復帰がかなう。七七〇年に従四位下となり、左中弁や衛門督(えもんのかみ)などを経て、七八〇年に参議右大弁に昇進、翌七八一年には従三位に至る。

 ところが、好事魔多しで、七八二年、氷上川継(ひかみのかわつぐ)の謀叛の企てが露顕すると、家持はそれに関わっていたとして一時解任させられる。しかし、嫌疑はすぐに晴れて参議に復し、のち陸奥按察使(むつあぜち)鎮守将軍となる。さらに、中納言に昇り、七八四年には持節(じせつ)征東将軍に任じられ、蝦夷地(当時は東北地方を指す)侵攻が実行されようとした矢先、家持は死去する。

 浮き沈みが激しい家持の人生もここでようやくピリオドを打つことになったが、実は死んでからもなお彼は災難に見舞われた。亡くなって一カ月後、長岡京造営の推進者であった藤原種継(たねつぐ)暗殺事件が起き、その謀議に関与していたとして、桓武(かんむ)天皇によって死者にもかかわらず除名(位階・勲位の剥奪)され、息子の永主(ながぬし)隠岐(おき)に流される。

 これは家持にはまったく身に覚えが無い濡れ衣だった。若いころ「海行かば」の歌を作り、天皇に燃えるような忠誠を誓った家持。その家持が死後、皮肉にも天皇に汚名をかぶせられることになろうとは……。

 八〇六年、桓武帝が亡くなると、家持は従三位に復され、名誉回復が図られる。

 七五九年の歌の後、「歌わぬ歌人」となった家持。実際は、次々と大伴一族に降りかかる政治的変動の波に翻弄され、歌作りどころではなかったのである。


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