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「日本ダメ論」のウソ
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経済・金融
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辛坊兄弟の『日本経済の不都合な真実』はトンデモ本だ

『「日本ダメ論」のウソ』
[著]上念司 [発行]イースト・プレス


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 辛坊治郎(しんぼうじろう)というキャスターが最近、しきりに兄の正記(まさき)氏(日本総研情報サービス代表取締役専務)と共著で『日本経済の真実』(幻冬舎(げんとうしゃ))など「日本は破産する」という趣旨の本をシリーズで刊行し、ベストセラーになっているようです。

 私は近著『日本は破産しない!』で、辛坊氏をはじめとした「日本破産論」はいかに根拠が薄弱で、仮に増税を目的として国民の不安感を煽るものならトンデモない話だと批判しました。

 しかし、辛坊氏は性懲(しょうこ)りもなく、また「日本破産論」の続編を出版しました。『日本経済の不都合な真実』(幻冬舎)という本です。

 毎度のことですが、これらのトンデモ論の特徴は、主張のすべてがウソではないという点です。

 たとえば、UFO論者のように最初からほとんどウソだろうとわかるような話なら、人々はそう簡単には騙されません。しかし、知名度のある人が、3割ぐらい本当のことが混入しているトンデモ論を語ると、みんな結構コロッと騙されてしまうものです。

 辛坊氏の基本的な論調は、「小泉改革は正しかった」というものです。私もその点についてはあまり反対するつもりはありません。

 ただ、いちばん問題なのは、なぜ小泉改革がある程度成功したのか、その要因分析に経済学の視点が欠如しているということです。もう少し正確に言うと、経済学の視点はあるのですが、固定相場制時代の古い経済学にとらわれているという点です。経済学者の岩田規久男(いわたきくお)先生は、辛坊氏の著作について、「経済学を知らない人が陥るよくある誤解が網羅されている」と厳しく批判しています。

 小泉改革の成功の裏には、日銀の量的緩和策という金融緩和政策があったことを見逃してはいけません。

 この政策によって、ひどいデフレ状態から、物価は一瞬ゼロを超えるぐらいまで回復しました。その間、「実感なき景気回復」と言われつつも株価は上昇し、為替(かわせ)も適度な円安に動いていました。新卒の大学生の内定率がバブル並みといわれ、マスコミは「バブル再来」などと大騒ぎをしていました。

 まず、ここで日本がデフレから脱却する過程を、きちんと理解しておきましょう。

 2011年1月20日に開催された「デフレ脱却国民会議」第2回公開シンポジウムにおいて、岩田先生がこのプロセスを非常にわかりやすくまとめてくれたので、そのときのメモを引用しておきます。

1 中央銀行が客観的な目標を持ち、ベースマネーを増やし続けることにコミットする
2 予想インフレ率が上がる(=物価連動債の価格が上がり始める)


 1と2のプロセスは、日銀が少しでも金融緩和をすればすぐに表れます。量的緩和の時代、予想インフレ率はプラス圏に入っていました。

 ちなみに、なぜ物価連動債が予想インフレ率の代理変数になるかというと、市場で自由に取引され、参加者は自由に値づけができ、しかも価格情報はつねにフィードバックされているからです。

 将来のインフレ率を予想するなら、どんな専門家に聞くよりも、もちろん辛坊氏に聞くよりも、物価連動債市場の取引値を観察したほうが確実です。

 さて、予想インフレ率が上がると次のプロセスに移行します。

3 インフレを予想した人々(法人も含む)が、デフレ時代に死蔵していた現金で株や土地や外貨など値上がりしそうな資産を買い求める(=現金や普通預金から資産市場に資金が流れ始める)
4 デフレ時代に貯め込んだお金は相当な額なので、しばらくの間はこのお金を回転させるだけで資金が(まかな)える。いきなり銀行の貸し出しが増えることはない。つまり、デフレ脱却に際して、貨幣の流通速度は増加するが、マネーストックは増加しないし、金利(名目金利)も上がらない(アメリカでも日本でも、大恐慌から脱出する際は、3年ぐらい金利は上がらなかった)
5 景気がよくなってくると、貨幣の流通速度を上げるだけでは資金が足りなくなる。この状態になって初めて銀行貸し出しの出番になる。マネーストックが増加し、金利(名目金利)が上がるのは、この段階である


 日銀がいつも言い訳している「日銀が資金をいくら増やしても民間に資金需要がない」というロジックは、1と2をきちんと実施していない現状ではまったく反論になっていません。

 ちなみに、2006年ごろには4のプロセスから5のプロセスに移行し始めていました。日銀が逆噴射せず、量的緩和をあと2年続けていれば、日本は完全にデフレを脱却していた可能性が高いのです。

 貸し出しは5の次の段階まで増えません。貸し出しが増えないということは、金利も上がりません。

 デフレ脱却に向けた動きが始まると、名目GDPが増加します。そして、税収も増えていきます。基礎的財政収支は、2006年には黒字化寸前になっています。このような金融政策のバックアップがあったからこそ、小泉改革は一定の成果を上げることができたのです。

 だから、正しい経済政策を採用すれば、国債の暴落など起こるはずがないのです。
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