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イスラム潮流と日本
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政治・社会
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増大するイスラエル社会の矛盾

『イスラム潮流と日本』
[著]宮田律 [発行]イースト・プレス


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 イスラエルのネタニヤフ首相はマフムード・アッバース・パレスチナ自治政府議長との交渉再開の条件としてイスラエルをユダヤ人国家と認定することを要求した。他方で、イスラエルでは二〇一四年一月七日、アフリカからの移民たちが難民認定を求めて一万人規模のデモを行った。アフリカからの移民は主にスーダンやエリトリアの出身者で、ダルフール紛争や政治的弾圧を逃れた人々だ。


 イスラエルは、ヨーロッパでの迫害を受けた人々が築いた国で難民条約の加盟国だが、ネタニヤフ政権はネゲブ砂漠の収容所にアフリカ移民を拘束し、その「隔離」か、あるいは国外への「排除」を進めようとしている。


 ユダヤの「タルムード(ユダヤの律法とその解説の集大成)」では、「ユダヤ人はユダヤ教の信徒であり、また母親がユダヤ人でなければならない」としているこの規定によれば、現在イスラエルを構成する人口六〇〇万人のうち三〇〇万人が「ユダヤ人」ではなくなる。主にロシアやウクライナからやってきたユダヤ人ではない者の多くが、祖父母の一人がユダヤ人だったということで国籍を認められた。


 ヨーロッパ出身のユダヤ人(「アシュケナージ」と呼ばれる)の祖先の母系はユダヤ人商業社会に嫁いだヨーロッパのクリスチャンたちが婚姻を契機に改宗した女性たちで、元々パレスチナで生まれたユダヤ人たちの子孫ではない。厳格に述べれば、こうした人々の血筋はユダヤ人とはいえない。


 また、イスラエルの総人口の五分の一はアラブ系イスラエル人で、彼らは二〇三〇年にはイスラエル人口の三分の一になると推定されている。ネタニヤフ首相が、イスラエルが「ユダヤ人国家」であるというのは明らかにアラブ系市民のことを差別するものだ。それは、あたかも国民の二二がクリスチャンではない米国のことを「クリスチャン国家」と表現するのに等しい。イスラエルのリーバーマン外相はアラブ系の人々の国籍をはく奪することを主張しているが、かつてヨーロッパ国家で無国籍にされたのは「ユダヤ人」たちだった。


 イスラエルの「代価の付け札」と呼ばれる極右組織によるキリスト教会への襲撃が二〇一四年五月下旬のフランシスコ・ローマ教皇の訪問を前にして相次いだ。「代価の付け札」の名前の由来は「入植地に反対する運動に代価を支払わせる」という意味で、極右のユダヤ人入植者たちがパレスチナ人施設、キリスト教会などに対する暴力事件を起こした後に「代価」と書き残している。


 この組織によるエルサレムの教会への襲撃はそれまでの一年間で二四件を数えたが、ほとんどが二〇一四年四月に発生した。エルサレムにあり、教皇が訪問するキリスト教施設「ノートルダムセンター」にも「アラブとクリスチャンに死を!」という脅迫のメッセージが書き記された。


 アラブのメディアはこうした極右の動きを「テロリズム」「人種主義」と表現しているが、イスラエル当局は有効にこの暴力を取り締まれていない。「代価の付け札」グループは、米国出身のラビ(ユダヤ教の律法学者)であるイツハク・ギンバーグ(一九四四年~)の思想や、ユダヤ人の人種至上主義者として知られたメイル・カハネ(一九三二~九〇年)に影響されている。ギンバーグは古代ユダヤ王国の再建を唱え、またカハネは(しつ)(よう)にパレスチナ人たちのヨルダン川西岸からの追放を訴えた人物だ。

「代価の付け札」はフランシスコ教皇の中東和平を呼びかける姿勢が不快だったのだろうが、彼らの「ヘイト・クライム」は日本の社会とも無縁ではないことだった。


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