みなさん「チャンプ」(79年)はもうごらんになりましたか。これに続いてシルヴェスター・スタローンの「ロッキー2」(79年)やライアン・オニールの「メーン・イベント」(79年)も公開が予定されているので、この項はボクシングからはじめましょう。
泣かせる代表作としては「チャンプ」【拳闘】
拳闘映画はハリウッドの少年時代からの名物で、戦前には男性的魅力を誇るスターなら必ず一度は選手の役でリングに熱戦を展開している。ここでは古い話をしない約束だからやめておくが、イキのいい小品も含めて佳作が多かった。いまや「チャンプ」がお客様を泣かせているが、一九三一年にキング・ヴィドアが監督した初版も名作で、今回のジョン・ヴォイトの役がウォーレス・ピアリー、リッキー・シュローダー坊やの役がいまやテレビで大活躍のおじさんだが当時は名子役と謳われていたジャッキー・クーパー、大いにぼくを感激させたものである。
戦前ではウィリアム・ホールデンのデビュー作品「ゴールデン・ボーイ」(39年)も忘れられないが、戦後公開の拳闘映画にも秀作が多く、ちょっとベスト・ワンをきめられない。製作年代順にいくと、日本では一九四八年に公開された「栄光の都」(40年)がメロドラマ的ベストと言える。勇み肌で売り出したジェームズ・キャグニーは戦前にも拳闘映画をやっているが、この作品では音楽家志願の弟アーサー・ケネディの学資を稼ぐためにトラックの運ちゃんからボクサーになり、賭博ギャングの策謀にはまってやたらに闘わされるうちに視力を失ってしまう。ギャングの親分はなんと名監督エリア・カザンだったが、映画の監督はアナトール・リトヴァクで、なかなかキレがよくムードの盛り上げも見事。ぼくの好きな作品の一つである。
続いて歴史的ベストには一九四二年にラオール・ウォルシュの監督でエロール・フリンが主演した「鉄腕ジム」を挙げたい。