あの偉大なジョン・ウェインが最後を飾った「ラスト・シューティスト」(76年)がようやく公開されたのに続いて若々しさがいっぱいの「新・明日に向って撃て!」(79年)がぼくたちを楽しませてくれた。そこでこの項と次項は西部劇の代表作パレードといきたい。
ムードと滋味あふれる「荒野の決闘」
西部劇と言ってもいろいろな題材がある。そこで種目別に代表作を選ぶことにしたいが、「ラスト・シューティスト」と「新・明日に向って撃て!」にちなんで、ガンファイターと無法者の世界からはじめよう。
ガンファイターと無法者は紙一重の差と言おうか、両方がダブっている場合がすくなくない。正義の味方の保安官になって勇名をとどろかせた人物でも、無法と言えないまでもちょっと首をひねりたくなるような行為をしている場合がある。
そこでまず一般的に西部の英雄として扱われている実在人物が主人公の映画から挙げると、ダンディなスタイルと派手なガンさばきで名高いワイルド・ビル・ヒコックを描いた作品では、やはり戦前の製作(36年)で戦後(66年)にも再公開されたゲーリー・クーパー主演の「平原児」を代表にしたい。クーパーの凄い早射ちも評判になったが、恋人カラミティ・ジェーンを演じたジーン・アーサーもとても魅力的だった。実際のカラミティ・ジェーンはろくに風呂にも入らない不潔な女性だったという説が有力で、ワイルド・ビルとも恋仲ではなかったと言われているが、映画に登場する場合は美人のほうが楽しい。彼女を扱った作品も多いが、ミュージカル的代表はドリス・デイの「カラミティ・ジェーン」(53年)である。
インディアンとの戦いやバッファロー狩りで評判をとり、やがて西部ショウの一座を作って商魂もたっぷりなところを見せたバッファロー・ビルは、ミュージカル「アニーよ銃をとれ」(50年)のような助演格を含めると非常に多くの映画に登場しているが、英雄として大々的に扱った代表作は戦後になって公開されたジョエル・マクリー主演の「西部の王者」(44年)で、インディアンの酋長イエロー・ハンド(アンソニー・クィン)との川中島の一騎打ちをはじめいろいろな見せ場を盛りこんだウィリアム・A・ウェルマン監督の力作。