天高くして馬肥ゆの秋とはなりにけり。そこでこの項は馬をトップにいろいろな動物を扱ったドラマ映画の代表作をさぐってみましょう。
少女と馬の愛情は「緑園の天使」
馬といえば西部劇である。西部劇専門スターはみんな名前のある名馬を相棒にしていた。戦争直後の日本で人気があった歌うカウボーイのロイ・ロジャースは白馬の〈トリッガー〉がよきパートナーだった。
馬がドラマのポイントでなくても、その活躍場面が魅力になる西部劇は無数で、たとえばジョン・フォードの諸作には、「駅馬車」(39年)でインディアンの大群が駅馬車を追撃する場面とか「黄色いリボン」(49年)で偵察に出た騎兵隊のベン・ジョンスンが疾走する場面とかのように、忘れられない名場面が多い。リチャード・ブルックス監督の「弾丸を噛め」(75年)で走りに走った馬が汗の塩と埃で白くなっているところなど、一つの場面としては代表的シーンに挙げていい。が、これらは馬の映画というジャンルに分類しにくい。
スポーツ関係、つまり競馬や乗馬競技も馬が出てこなければ成立しない。が、大半の作品のクライマクスや途中の見せ場でこそ馬が中心になるが、ドラマとしては人間同士のかかわり合いが中心になっている。まぁウェイトのかけ方次第ということになる。
だいたい動物映画というと記録映画的なものが大半を占める。ドラマになれば人間と結びつくことが多い。人間でも少年少女と仲よしになるパーセンテージが一番高い。馬についてみれば、「出逢い」(79年)のようにオトナのロバート・レッドフォードが一頭の名馬を野に放とうと苦労するお話もあるが、少年少女と馬との愛情を描いた作品にすぐれたものが多い。
少女の場合、その代表には「緑園の天使」(45年)を選びたい。