この項では、あるいは壮大あるいは華麗、あるいはロマンティクあるいは痛快なる中世英雄絵巻の代表作を選ぶことにしたい。
アーサー王物語代表は「エクスカリバー」
まずアーサー王の物語からはじめよう。
この中世英雄伝説がなぜポピュラーになったのか。正義とか忠誠とか信仰心とか、精神的な要素が土台になっていることはもちろんだが、主人公が名剣エクスカリバーを手に入れて王者への道を歩む冒険あり、彼の王妃グェナヴィアと騎士ランスロットの悲恋あり、彼を補佐する円卓の騎士たちの武勇談あり、魔法使いマーリンの活躍あり、さらに聖杯探索の興味まで加えて、大衆をひきつける魅力が山盛りだったからと言える。つまり映画にも絶好の題材というわけで、古くから実に多くの作品が生れている。
その中には、マーク・トウェインの有名小説で三度も映画化された「アーサー王の宮廷のコネティカット・ヤンキー」みたいなパロディ的なものもある。現代の青年がひょんなことからアーサー王の時代へ行ってしまうという空想的なお話で、戦後版はビング・クロスビー主演の「夢の宮廷」(49年)である。またディズニーの「王さまの剣」(63年)のような長篇アニメもある。これはエクスカリバーを岩から引き抜いた若者がアーサー王になるというマトモなお話で、魔法使いマーリンも登場、魔法合戦をする場面など楽しかった。
俳優が出演してのドラマ作品は騎士道チャンバラとして作られることが多い。「円卓の騎士」(53年)はロバート・テーラーのランスロットがエヴァ・ガードナーのグェナヴィアと愛し合うようになるが、王位を狙うスタンリー・ベーカーのモードレッドが内乱を起したためチャンバラ場面がはじまる、というお話で、極彩色の絵ハガキといった感じの華やかな絵巻物に仕立ててあった。