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「イベント実務」がよくわかる本
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[1]イベントとは何か

『「イベント実務」がよくわかる本』
[著]平野暁臣 [発行]イースト・プレス


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 イベントという事業形態は、規模や形式の如何を問わず、固有の特性を本来的に備えています。なかでも最も特徴的なものが、『輻輳性』『臨時性』『一回性』の3つです。


 この3つは、イベントとルーティン業務との違いを際立たせる最大の要因であり、イベントをつくることの楽しさと困難さの双方を生み出す源泉ともなるものです。

「輻輳性」


 一般に、イベントが処理すべき課題は広範にわたります。構成要素や関連領域の幅の広さはイベントの代表的な特徴の一つであり、大体においてその幅は傍から見るよりはるかに広いものです。なぜなら、イベントは一つひとつが単体のプロジェクトとして独立しているため、一事業の遂行に必要となる業務内容が一通りすべて包含されることになるからです。


 現状分析~コンセプト策定~計画立案~組織編制~合意形成・利害調整~モノやシステムの設計~制作・製作~会場設営~会場運営~広報宣伝~観客動員……。規模や種別にかかわらず、計画段階での「全体像の構築」から「現場の撤去」に至るまで、実に多くの業務をこなさなければなりません。


 つまり、イベントの制作過程では、さまざまな領域の問題を相互に矛盾なく、かつ同時に解決していくことが求められます。そのためには、処理すべき課題を遺漏なく検討の土俵に上げ、それぞれのあり方と基本的な方向をしっかりと見定めておくことが必要です。


 ただし、それぞれの課題は相互に絡み合っていて、しかも流動的です。この意味ではイベントは「将棋倒し」に似ています。一つの要素が変わるとそれにつれて他の要素も次々と動き、最後には全体の姿まで変わってしまうという構造を否応なくもっているからです。実施内容が変われば会場与件が変わり、会場条件が変われば運営与件が変わり、運営条件が変われば組織体制が変わり……といったように、一つの条件変更が次から次へと波及していきます。


 しかも、イベントの構成要件に影響を与える諸々の事情が時とともに変動するため、それぞれの要素も最後まで修正と調整を余儀なくされます。すなわち、イベント経営にとって、「部分」の変化が「全体」に及ぼす影響を常に掌握できるか否かが成否を分ける極めて重要なポイントになる、ということです。


 イベントの有するこうした『輻輳性』に立ち向かうためには、多岐にわたる業務内容について個別に十分な検証を加え、向かうべき方向をしっかりと見定めておくこと、しかも、それら相互の関係性についても十分に把握したうえで全体を一つの体系として認識すること、が極めて重要なのです。

「臨時性」


 一方、イベントとはある限られた瞬間にだけ特別に現出するものであって、『臨時性』がその存立基盤です。いうまでもなく、そのままの状態で恒常的に続くのであれば、それはもはやイベントではありません。イベントとはあくまでもイレギュラーな出来事です。逆にそうであるからこそ、ルーティンとは違う特別な態勢が取れるのであり、イベントならではのエネルギーが結集できるのです。日常の事業では得られないイベント独自のインパクトと効果の多くは、この臨時性からもたらされるものです。


 ただし、臨時につくられるのは、必ずしも事業内容ばかりではありません。準備を進め運営を担う実務執行組織もまた、多くの場合、その都度臨時に編制されたいわば「仮設」の組織体です。つまり、イベントの多くは、一回限りのテンポラリーな人間関係のなかでつくられる、ということです。


 このため、安定した組織の内部で進む通常のライン業務とは違って、関係者の「認識の統一」と「意志の疎通」がイベント実務を進めるうえでの大きな課題となるのです。


 しかも、ある程度の規模を超えると、多様な専門家(もしくは専門会社)との連携と協働が必要になります。こうしたケースでは、実務執行組織のプロパーと外部の専門家との共同作業を前提としたゆるやかで柔軟な組織体の形成が不可欠です。


 いうまでもなく、組織のもつこうした「臨時性」は、それ自体がリスク要因となるものです。イベントの準備を進める際には、実務執行組織がそうした不安定で齟齬の生じやすい構造にあることを十分認識したうえで、それぞれの構成員が迷わず実務を進められるよう環境を整えることが必要です。

「一回性」


 さらに、イベントは原則として一回限りのものです。まったく同じ条件の繰り返し、すなわち前例をそのまま再現すればいいというケースはほとんどありません。仮にあったとしても、定型化したプログラムの反復では魅力的なイベントにはなりません。つまり、どのようなイベントであれ、関係者にとってそれは常に初めての試みであり、イベントの制作は基本的に手探りで進まざるを得ないということです。


 この『一回性』こそが、「強烈なインパクトでイメージを残す」「さまざまな試行や提案が許される」というイベント本来の魅力を支える根幹であり、一方で、マネージメントの困難さというハードルの高さをつくりだす原因ともなっています。


 いずれにせよ、前例や成功例をそのままトレースすることができない以上、イベント制作者はその都度独自の枠組みを組み立てることを余儀なくされます。しかもイベントは、一般の商品のようにテスト販売で様子を見ることも、売れ行きに応じて徐々に方向を変えることも、基本的にはできません。つまりイベントには「本番」しかないのです。


 こうした状況にあって、自信をもって前に進むためには、常にリアリティのある全体像を描き続けることが不可欠です。整合性をもった全体像がいつも目の前に見えていれば、安心して作業に取り組めることに加え、より合理的なプランへとブラッシュアップしていくことが可能となります。


 しかも、上述のごとく内容の一部に修正や調整が必要になった場合でも、一度破綻のない全体像が描かれていれば、関連する要因をすべて調整することで、変更後も依然として整合性を保った全体像を把握することができるのです。

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