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日航機遺体収容 ―123便、事故処理の真相
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政治・社会
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はじめに

『日航機遺体収容 ―123便、事故処理の真相』
[著]河村一男 [発行]イースト・プレス


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 昭和六〇年八月一二日、一八時五六分三〇秒をわずかに(おそらく一秒前後)過ぎた時刻──。

 日航123便ジャンボ機が、高天原山(たかまがはらやま)系の無名の尾根に激突した瞬間である。

 五二〇人の死者を出し、史上最大の飛行中事故となったその瞬間から、満二〇年が経過した。「早くも」と、「ようやく」と、両面の感慨がある。

 われわれ群馬県警は、多くの支援を受けながら、全力をあげて事故の処理に当たった。

 発生の八月一二日から、一二月二四日までの一三五日間、対策本部を設置していた。中核の業務を担当した者は、いずれもぶっ倒れる寸前のふらふらの状態だった。
「お互い、よく体がもったな」と、思わず出た感想を昨日のことのように思い出す。一歩まちがえば、過労の殉職(じゅんしょく)者が出ても不思議ではなかった。

 甲子園球場の広さに相当する激突現場、そこからの遺体の発見、現場検分、収容、搬送(はんそう)、藤岡市における検視、身元確認、遺族への引き渡しに至る、一連の作業である。

 そのすべてが想像を絶する過酷なものとなった。

 

 群馬県警はかつて、作家・横山秀夫が『クライマーズ・ハイ』(文藝春秋)のなかで「大久保・連赤」と呼ぶ多数遺体の発掘という特異な捜査経験をしているが、それでも被害者数は二桁止まりである。

 この事故のように、死者数五二〇(離断体を加えると二〇六五)にのぼり、しかも焼損、腐敗、虫害等の損傷がひどいうえ、現場が急峻(きゅうしゅん)な山岳部であるという例は、他府県警も経験したことのない特殊な条件であった。

 一片の離断体(りだんたい)でも多く遺族の元に帰したいという思いで、可能な限りの手段を尽くしたつもりであったが、どうしても確認方法のない離断体が多く残り、やむなく合同火葬に付さざるをえなかったという悔しい思いも残る。

 たしかに、われわれは非力であった。力及ばなかったこともあったと思う。

 だが、今一度といわれても、あれ以上のことをやり遂げる自信はない。

 及ばなかった点はなにか、どうすればできたのか、いまだに考えることがある。当時を日を追って振り返りながら、その課題を率直に検証してみることとした。

 問題の原点は、想定の枠からはみ出た大事故であったということであろう。あのときまでジャンボ機が墜落するという現実的想定がなかったということに尽きる。

 観念的にジャンボ機墜落を題材とした著作がなかったわけではないが、航路を外れてあのような険しい山中に落ちることは、誰も考えたことがなかったといったほうが正確であろう。

 問題は事故後、その貴重な体験を活かす対策が採られているかどうか、ということだ。

 これほどでなくても多数死者の出た事件でのわが国マスコミの論調は、お涙頂戴型に傾きやすい。確かにウェットな国民性のなせるところであり、遺族感情という情緒的部分はわからなくはないが、あまりその主観的条件が過ぎると、冷静な分析力を失ってしまいやすい。

 二〇年経った今日では、その情緒的部分は横において冷厳な目で事実を見つめ直してみる必要があろう。ただ一つ残念なのは、当時の実情を知る者のほとんどが、その職掌から離れていることであり、特に事情の機微に触れる部分の判断をした首脳部の多くが物故したのが、つらい。本来は事故発生直後にはじめなければならなかった作業であろう。

 

 本書では、そうした日本国民・マスコミに特有の情緒的な部分にあえて逆らい、事故処理の現場の実情と、そこで私がくだした決断を、赤裸々に書いたつもりである。

 墜落の当日、及び翌日の捜索については、前著『日航機墜落 123便、捜索の真相』(イースト・プレス)に書いたので、本書では、一三五日間にわたる事故処理活動のうち、遺体の収容、身元確認に明け暮れた八月一四日以降の一三三日間を中心にまとめた。また、マニュアルとして役立つ情報も努めて盛り込んだ。

 批判の向きもあるかもしれないが、意のあるところを()んでいただけるよう願う次第である。

 
河村一男(元群馬県警察本部長・日航機事故対策本部長)
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