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店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
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ビジネス
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『店長のためのやさしい《ドラッカー講座》』
[著]結城義晴 [発行]イースト・プレス


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小売業とサービス業の店長はドラッカーに応援されています!


「店長」という言葉に、あなたはどういうイメージを抱きますか。

 ある人は「やりがいがある仕事だ」と言うかもしれない。またある人は、「休みがないし、大変だ」と考えるかもしれない。
「大変だ」と思う人の中には、マクドナルドの「名ばかり店長裁判」を思いだしている向きもあることでしょう。店長という肩書きながら店舗運営の決定権はない。それでいて月一〇〇時間超の残業代も支払われない……。マクドナルド裁判が、店長のイメージをネガティブにしてしまったことは否めません。

 しかし、マクドナルドで長くアルバイトをしているフリーターの一人は、こう言います。
「できたら店長をやりたいですね。だから長く勤めているんです。お店は店長次第ですし、一つの店を自分でマネジメントできるというのは、やりがいがありますよ」

 また、脱サラしてセブン-イレブンの二店舗を経営するに至ったオーナー店長は、こう話します。
「休める日は、ずっと減りました。でも女房と二人、それに店員さんたちと頑張っています。大変といえば大変だけど、サラリーマンに戻ろうとはまったく思いません。フランチャイジーといえども自分の城ですから」

 この店長のお店は、地元の評判がとてもよいのです。フランチャイズチェーン(FC)ですから、商品や価格は他のセブン-イレブンと基本的には変わりません。でも、同じ商圏内にある他のセブン-イレブンに比べると、明らかにお客様の出入りが多い。

 とくに朝は、通勤前の人も含めて、近所の人が次から次へとお店の中に入っていきます。朝は店長がほとんどといってよいほど必ず店内にいます。自らレジを打っていることも多々あります。
「あっ、中村さん! おはようございます」
「おはよう、ゆかちゃん! 今日もおじいちゃんの新聞?」

 店長は、いつも親しげに、とても明るい雰囲気で一人ひとりにあいさつします。多くのお客様の名前も覚えています。

 いや、店長ばかりではありません。アルバイトやパートタイマーの店員さんたちも、心のこもったあいさつをしますし、棚の前で迷ったりしていると、すぐに近づいてきてアドバイスをしてくれます。「今度、こんな商品が入りましたよ」と、さりげなく新しい商品の紹介もしてくれます。

 ちなみに、この店長のお店は本部から表彰されるほど、全国でも高い売上実績をあげています。


 コンビニエンスストアでも、ファストフード店でも、売上実績には店によって大きな差があります。立地条件はそれほど変わりがないのに、「あの店はよくお客が入っているけど、こっちの店は入っていないね」といった会話を、近隣の人たちはしているものです。

 何が違うのか。チェーンストアでは、提供する商品・サービスや価格施策にこれといって差がないわけですから、お客の入りが違ってくる決定的な要素が、それ以外にあることは明らかです。

 マクドナルドでアルバイトをしている青年が、「お店は店長次第」と言っています。お客の入りが異なり、その結果、売上げに大きな差が出てくるのは、店長のやり方によるのです。

 チェーンストアか単独店か、フランチャイズチェーンか直営店か、小さなお店か大きなお店かは関係ありません。魚屋も電器店も、ラーメン店も居酒屋も、食品スーパーマーケットも百貨店も、実は同じです。お店は店長が中心になって「何をどう売るか」を決め、お店で働くすべての人がその方針に基づいてお客様に接します。

 方針がその地域に合わなかったり、時代の流れとずれていたりすると、お客様が集まらず、お店の売上げは上がらないのです。また十年一日のごとく、何の工夫もなく同じ方針で同じことを繰り返していると、売上げは次第に下がっていき、やがてお店は立ち行かなくなります。

 店は客のためにあり、店員とともに栄え、店主とともに滅びる。


 この言葉は、故・倉本長治(くらもとちょうじ)先生の教えです。私が師と仰ぐ株式会社商業界の創始者。

 もし店長が、去年も今年も、昨日も今日も同じことをしていたとしたら、明日のお店のために何もせずに、ひたすら今日の延長線上で仕事を続けていたとしたら、お店は必ず滅びる。逆に、お客様のために今日何をして、明日のお客様をどうお迎えするかを考え、店員とともに毎日お店の変革を続けていたら、お店の売上げはきっと伸び続け、地域ナンバーワンの店であり続ける──。

 ピーター・ドラッカーは、このことを「イノベーション」と言いました。

 明日のお客様のために何をするか。どう運営すればロイヤル・カスタマー、すなわち信頼感で結ばれたお客様を増やしていくことができるか。店長の仕事における「イノベーション」とは、そのことを日々考え、店員とともに実践することです。


 ドラッカーは、こう言います。

 イノベーションとは、顧客にとっての価値の創造である。それは科学的、技術的重要度ではなく、顧客への貢献によって評価される。

 イノベーションの必要性を最も強調すべきは、技術変化が劇的でない事業においてである。

 (『ドラッカー365の金言』より)
「技術変化が劇的でない事業」の代表的なものは、非製造業です。つまり、小売業やサービス業なのです。

 小売り・サービス業には、コンピュータや通信機器、あるいは自動車や電子機器のような目覚ましい技術革新はありません。

 かつて、POSシステムに代表されるような情報管理面の進歩はありました。店づくり、業態・フォーマットの開発などの進化は少なからずあります。しかし、お店という現場においては、店長以下のマンパワーこそが最大の経営資源になっているのですから、劇的な技術変化が起こる余地は少ない。

 ドラッカーは、だからこそイノベーションの余地がきわめて大きいし、その必要性が強調されなければならないと指摘しているのです。

 店長には、考えることがたくさんあります。

 お店の商圏にはどういう人たちが住んでいるのか、その住民たちはどういう生活をしているのか、またどういう生活をしたいと願っているのか。休日はどういう過ごし方をしているのか、家族と遊ぶときはどこまで行くのか、学校はいくつあってそれぞれどういう特徴があるのか、病院はたくさんあるのか、地域にはどのような伝統行事があるのか……あげればきりがありません。

 気づいた方もいるかもしれませんが、いま例にあげた「店長が考えること」は、いずれも自分の商圏内のお客様に関することです。
「店は客のためにある」のですから、店長が考えるべきことは常にお客様のことなのです。そして、それが「顧客にとっての価値の創造」と「顧客への貢献」を実現する道を開くことになります。

 ドラッカーは、二一世紀を見すえたときに「知識社会」の到来を予見しました。このことは、特に著書『ポスト資本主義社会』の中で手厚く論じています。

 ではその「知識社会」とは何か?

 著書のタイトルから推測できるように、「資本」の代わりに「知識」が最大の資源(元手)となる社会のことです。

 知識を保有するのは人です。この「人」には「知識の保有者」であること以外に、なんの条件もつきません。資本を保有するのが資本家であることと、大いなる違いがあります。


 知識社会の到来とともに、もう一つドラッカーが予見したのは、知識社会で活躍するのは「知識労働者」であるということです。
「知識労働者」とは、少し堅苦しい言葉かもしれません。原語は、「Knowledge worker」(ナレッジ・ワーカー)となっています。「worker」を日本語訳にすると「労働者」ですから、「Knowledge worker」の訳としてはこうなってしまいます。

 ユニクロの柳井正(やないただし)さん(株式会社ファーストリテイリング会長兼社長)も、NHK「知るを楽しむ 仕事学のすすめ」で述べた内容をまとめた『柳井正 わがドラッカー流経営論』という本の中で「知識労働者」という言葉を使っていますが、そこにはわかりやすい修飾語句がついています。
「社員一人ひとりが、自分の意見や知識をもって、自発的に行動する『知識労働者』でなければならない」

 そして、こうも言っています。
「本部から渡された接客や品ぞろえのマニュアルをただ守っているだけでは意味がない。どうすればお客様が喜び、モノが売れるのかを自分なりに考え工夫する姿勢が大切なんです」

 この文言は、主に店長や店で働く人に向けて言ったものです。

 この柳井さんの言葉は、ドラッカーの言う「知識労働者」を的確に語っていると思います。


 同じ地域の同じ業種業態で集客力や売上げに大きな差が出る。その原因は、店長の「Knowledge(ナレッジ)」にあることは間違いありません。「Knowledge」を直訳すれば「知識」ですが、私も柳井さんの文言の中にある「自分の意見や知識をもって」、「自分なりに考え工夫すること」だととらえています。「知恵と知識」。それが「Knowledge」です。
「ナレッジ」という資源は無限です。また人が自由に、かつ限りなく保有できるものです。そしてこの「ナレッジ資源」は、学べば学ぶほど増えていきます。また、使えば使うほど磨かれていきます。
「学ぶ」とは、スクールに通ったり本を読んだりすることばかりではありません。店長にとって、現場であるお店こそ、最大の学びの場です。

 学ばせてくれるのは、お客様。お客様の声は、店長にとって最高の教師といえます。そして店長の知恵と知識が増えるほど、お客様への貢献度が高まります。

 もちろん、店長だけ学び、ナレッジという資源を増やせばいいかというと、そうではありません。「店は客のためにあり、店員とともに栄える」のですから、店長は、店員にもナレッジが増えていくように努力しなければなりません。

 店長が中心になって、店員とともにナレッジという資源を拡大し、お客様のために有効に活用できるか否か。

 それが、お店の優劣を決定する最も重要な要素だと、私は確信します。

 ここでもう一度、ドラッカーの言う「イノベーション」の定義を振り返ってください。店長にとって、とても大事なフレーズなので再掲します。


 イノベーションとは、顧客にとっての価値の創造である。それは科学的、技術的重要度ではなく、顧客への貢献によって評価される。

 イノベーションの必要性を最も強調すべきは、技術変化が劇的でない事業においてである。

「顧客にとっての価値の創造」は、お店で働く一人ひとりのナレッジによって可能になるのです。

 これからは知識労働者が活躍する時代だと断言したピーター・ドラッカー。

 私は、ドラッカーが小売り・サービス業の店長たちを励まし、応援しているように思えて仕方がありません。

もし、ドラッカーが小売・サービス企業の社長だったら

 製造業が日本の経済社会をリードする時代は終わった。これからはわれわれ小売業やサービス業が日本をリードする時代だ。

 われわれの業界には、イノベーションの余地が山ほどある。それをどれだけ自分のものにしていくかが、店の優劣を決めるだろう。

 お客様に学び、そして学んだことを少しずつお客様にお返しする。そうすればきっとお客様はわれわれに感謝してくれるだろう。“ありがとう”という率直な感謝の言葉こそ、われわれの生きがいであり、仕事の喜びなのだ。

 そしてわれわれも、お客様に心より感謝を示さなければならない。この“ありがとう”の連鎖が、日本を変えていくに違いない。


 ドラッカーの著書の中に、右のような文言は見当たりません。ドラッカーは自分の本質を「傍観者」と認めていましたから、社長になるはずも、絶対といっていいほどありません。

 しかし、もし万が一、あなたの会社の社長がドラッカーだったら、きっと力強く、こう話しかけるに違いありません。


 なお蛇足ですが、ドラッカーは、これから活躍するのは「知識労働者」であると同時に「知識経営者」であるとも言っています。

 私は、両者を融合させて「知識商人」という言葉を使っています。ただ、ちょっと古めかしいので、少しでも格好よくと思い、最近では「ナレッジ・マーチャント」という言葉を好んで使っています。

 なじみが薄いので本書ではあまり多用しませんが、時々使わせていただきます。ご容赦ください。

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