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店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
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ビジネス
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エピローグ

『店長のためのやさしい《ドラッカー講座》』
[著]結城義晴 [発行]イースト・プレス


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ドラッカーと倉本長治「商売十訓」


 最後に、私が師と仰ぐ倉本長治が昭和三〇年代に提唱した「商売十訓」を紹介します。
『商業界』初代主幹の倉本長治は一八九九年(明治三二年)生まれ、一九八二年(昭和五七年)逝去。

 いっぽう、ピーター・ファーディナンド・ドラッカー(Peter Ferdinand Drucker)は一九〇九年一一月一九日生まれ、二〇〇五年一一月一一日逝去。

 倉本長治とドラッカーに、接点はまったくありません。

 しかし、この「商売十訓」は、まさしくドラッカーの思想そのものです。店長やマネジャーの皆さんには、ぜひ頭に入れていただきたいと思います。「十訓」すべてが一四文字で構成された美しい言葉です。

一 損得より()きに善悪を考えよう

 店長をはじめ、お店で働く人たち全員が貫くべき仕事の大原則だと思います。このことは、ドラッカーが「(マネジャーに)始めから身につけていなければならない資質が一つだけある。才能ではない。真摯さである」と、マネジャーの資質として強調する「真摯さ」に共通しています。
「真摯」を広辞苑で引くと、「真面目でひたむきな様」と書いてあります。英語でいえば、「インテグリティ(integrity)」です。ドラッカーの思想には、この「インテグリティ」が色濃く出ています。「真摯さ=インテグリティ」は、店長やマネジャーに特に覚えていただきたい言葉です。

二 創意を(とうと)びつつ良い事は真似(まね)

 この教えは、ドラッカーの言う「イノベーション」と共通しています。日々創意をもってイノベーションを実行し、「顧客を創造する」ことが知識商人には求められます。「良い事は真似ろ」は、インテグリティでもあります。

三 お客に有利な商いを毎日続けよ

 この言葉は、「顧客優先」の考え方を示すものです。すなわちマーケティングの本質をうたったものであり、同時に本書の冒頭に示した「店は客のためにある」と同じです。そして、ドラッカーが企業活動の目的として示した「顧客にとっての価値の創造」や「顧客への貢献」に通じています。

四 愛と真実で適正利益を確保せよ

 この教えは、ドラッカーの言う利益の定義につながっています。

 この三と四と同じことは、本書1章でも触れています。

五 欠損は社会の為にも不善と悟れ

 この言葉は、ドラッカーの言う「企業の社会的責任」と「利益」についての定義を結合させたものと共通した考え方になります。

六 お互いに知恵と力を合せて働け

 この教えは、118ページに掲げたドラッカーの言葉、「成果を上げる秘訣の第一は、共に働く人たち、自らの仕事に不可欠な人たちを理解し、その強み、仕事の仕方、価値観を活用することである」に共通しています。

 また、ドラッカーのチーム論(152ページ)とも共通しています。

七 店の発展を社会の幸福と信ぜよ

 ドラッカーは、企業の目的を定義するとき「企業は社会の機関であり、その目的は社会にある」ことを前提として、「企業の目的は顧客を創造することである」と言っています。倉本長治のこの教えも共通しているのです。

八 公正で公平な社会的活動を行え

 ドラッカーの言う社会貢献、もしくは地域社会への貢献と同じです。

 私は、社会貢献の意味を二つに分けてとらえています。

 一つは本業における社会貢献、もう一つはボランティア活動です。店長が地域コミュニティに参加して地域の人たちと地元の行事を盛り上げるといったことは、後者に当たります。
「公正で公平な」のところは、インテグリティでもあります。

九 文化のために経営を合理化せよ
「仕事ができる者は、集中する。集中するための原則は、生産的でなくなった過去のものを捨てることである。過去を捨てなければ、明日をつくることはできない」──これが、ドラッカーの考える「経営の合理化」です。

 しかし、たとえば『マネジメント・フロンティア』の中では「あまりにわずかの企業しか、昨日を捨てていない。あまりにわずかの企業しか、明日のために必要な資源を手にしていない」と述べています。

 経営合理化とは、人員の削減ではありません。昨日を捨てることなのです。
「生産的でなくなった過去のもの」を捨てる。すると何が残るか。

 残るのは「生産的な過去のもの」。それが「文化」です。明日につながる昨日のもの、それが「文化」なのです。

 だから「文化」のために「経営」を「合理化」することは、なんら矛盾するものではありません。

 明日のためには役に立たない過去のものを捨てるのが「経営の合理化」。明日のために役立つものを残すのが「文化」。そう倉本長治は言っているのです。

十 正しく生きる商人に誇りを持て

 これは「インテグリティ」のまとめのような言葉です。ドラッカーの強調する「真摯さ」を知識商人(ナレッジ・マーチャント)向けに絞っていえば、倉本長治のこの言葉になります。

 そしてこの第十訓は、循環して前にもどり、第一訓の「損得より先きに善悪を考えよう」へとつながります。「商売十訓」は循環の形式を持っているのです。

 そして第一訓から第十訓までに貫かれているのが、ドラッカーの唱える「インテグリティ」であり、第二訓はイノベーション、第三訓はマーケティングを意味しています。

「始めから身につけていなければならない資質が一つだけある。才能ではない。真摯さである」
「企業の目的は、顧客の創造である。したがって、企業は二つの、そして二つだけの基本的な機能を持つ。それがマーケティングとイノベーションである」

 ドラッカーと倉本長治。力点の共通性と、共通項の多さには、驚かされるばかりです。

 これはすなわち、二人がそれぞれに真理に近づいたことを、証明していると思うのです。


 以下は、ドラッカーが自著『現代の経営』について語った言葉です。

 「ノコギリや金槌(かなづち)、あるいはペンチしか持たない者は、大工はできない。それらの道具を一そろえにしたとき、初めて大工道具を手にしたということができる。それが、私が『現代の経営』で行ったことだ。私はマネジメントを体系としてまとめたのだった」

 ドラッカーのマネジメント体系は、一そろえになったとき初めて「一人前の大工道具」となります。

 倉本長治の『商売十訓』もまったく同じです。一つひとつの教訓はむしろ、当たり前のものです。しかしその当たり前の十の要素がすべてがそろったとき、真の知識商人(ナレッジ・マーチャント)が誕生するのです。

 この本で私が、ドラッカーや倉本長治を通して、店長をはじめとする小売業・サービス業のミドルマネジメントに訴えたいことは、ここにあります。

「自らの強みを知れ、そして強みを活かせ」

 ドラッカーはこう訴えます。そしてさらに、こう私たちに問いかけます。
「何によって憶えられたいか」
「自らの強み」を発揮し、「これによって憶えられたい」と答えるには、まず「大工道具一式」を知らなければならないと、私は考えます。この態度こそが知識商人のあり方だと思います。そして「知らざる」を知った上で、自らの「強み」を知り、「強み」を活かし、伸ばすのです。

 この本を読んでくださったすべての知識商人が、「これによって憶えられたい」と胸を張れるようなマネジメントの一員になることを祈ります。

 何よりも、ドラッカーは小売り・サービス業の店長が知識商人になることを応援していた。このことが私たちに元気と勇気を与えてくれます。


 最後に、多くの方々に感謝したいと思います。

 まず亡くなられたピーター・ドラッカー先生、そしてその日本の分身といわれる上田惇生(うえだあつお)先生。上田先生のお(すす)めなしには、この本は生まれませんでした。

 小売商業の世界では、イトーヨーカ堂創業者の伊藤雅俊(いとうまさとし)さん、イオン名誉会長相談役の岡田卓也(おかだたくや)さん、作家・荒井伸也さん、そしてファーストリテイリングの柳井正さん。皆さんドラッカーを実践してきた人々ばかりです。この皆さんの前では、私は恐縮するばかりですが、勇気を出してこの本に取り組みました。ありがとうございました。

 末筆ながら記して、心より感謝の意を表させていただきます。

二〇一一年五月 結城義晴
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